Research Abstract |
[神岡実験施設関連] (1)防災監視装置,防火壁設置工事 液体シンチレータは乙種第4類危険物であるため神岡消防署の指導により、次のような防災措置を施した。実験施設内の3箇所(実験室ドーム、データ収集計測・解析計算機室,液体シンチレータ純化装置室)に煙,炎,温度を検知するセンサー(指定数量)の取付,それらのセンサーからの信号を集中管理し,状況または警報を表示する中央監視装置を人が常に滞在しているデータ収集計測・解析計算機室に設置した。さらに,実験施設内3箇所に上記のセンサーと連動して開閉を行う防火壁を設置した。 (2)清浄空気精製装置取付工事 鉱山内の空気中には放射性気体であるラドンが多く含まれていて,その濃度は鉱外空気の1000倍以上である。このため,検出器内を極低放射能環境に保つには,ラドンが検出器内に侵入することを極力阻止しなければならない。また,ラドンは肺ガンを引き起こすことが指摘されており,実験者の健康を守るためには実験施設内のラドン濃度を下げなければならい。このため,実験施設内の空気を清浄化(ラドン,水分,ほこり,塵を除去)する装置を設置した。 (3)データ収集計測・解析計算機室設置工事 検出器内の各光電子増倍管から送られてくる電気信号から,シンチレーション発光量と発光時間情報を取出す電子回路系と,これらのデータを物理解析に便利な方式に作成する電子計算機系が設置される部屋を実験施設内に設置した。 (4)鉱外研究室の設置 実験開始後は,地下実験施設にある各装置の稼動状況や検出器の状態,またデータ収集が正しく行われているかどうか等の実験状況を絶えず把握しなければならない。日中は実験者が鉱内にいるため点検を行うことができるが,夜は無人運転になる。このため,東北大学から夜間の実験状況を監視することができるように,鉱外に研究室を設置して実験諸データを鉱外研究室の計算機で取り込み,これを東北大学に転送する。このデータ中継基地となる研究室として神岡茂住地区にある181m^2の平屋の建屋を地元のお寺から無償借用し,水洗トイレやシャワー室の整備,照明整備を行った。 (5)データ転送光ファイバーの敷設と直結電話回線の設置 地下実験施設から鉱外研究室までの5kmの区間に光ファイバーを敷設し,実験データや実験装置の状況データの高速転送が行えるようになった。また鉱外研究室と東北大学との間に直結電話回線を敷設した。これによって上記の実験状況監視が東北大学でも行えるようになり,実験遂行の体制が整った。また,3施設(地下,鉱外,東北大)の間で,PHS内線電話や,Faxテレビ会議が利用できるようになった。 [開発研究状況] (1)17インチ光電子増倍管 本年度はこれまでにでき上がった1,200本の17インチ光電子増倍管の時間分解能,エネルギー分解能,雑音特性を計測し,性能の確認を行った。また,17インチ光電子増倍管は大光量の入射に対しても飽和すること無く応答することが開発段階で判明しており,直線応答性(リニアリティ)を全光電子増倍管で測定した。これによって,低エネルギー・ニュートリノのみならず,大気ニュートリノ現象や陽子崩懐現象の観測が可能になった。一方,低エネルギー・ニュートリノ検出を強化するために,旧カミオカンデで使用した20インチ光電子増倍管をタンク内に取付けることを検討し,600本に防油構造を施した。これによって,1,300本の17インチと600本の20インチ光電子増倍管がタンク内に配置されることになり,液体シンチレーション光検出能力の向上が期待される。 (2)液体シンチレータ 昨年度までの研究で大型液体シンチレータ検出器用には,流動パラフィン(80%)+トリメチルベンゼン(20%)+PPO(ジフェニールオキサゾール:2g・リットル)の割合の混合液が最適であることが判明した。本年度は各物質のサンプルを米国,欧州,日本の各国の会社から取り寄せ,引火点,光透過率,発光量,粒子識別能力(中性子/ガンマー線),パルーン素材や光電子増倍管ガラスへの侵食度合い,45度の温度での長期安定性加速試験等の性能を比較して供給会社の選定を行った。
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