2010 Fiscal Year Annual Research Report
ロジウム二核錯体の二量化に基づく高機能水素生成触媒の開発
Project/Area Number |
09J05859
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 早弥 九州大学, 理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 水の可視光分解 / 光水素発生 / ロジウム二核錯体 / 電子受容サイト / メチルビオローゲン |
Research Abstract |
本課題では、ロジウム(II)二核錯体の光水素生成触媒機構を解明し、活性を高度に制御することを目的として研究を展開する。金属錯体触媒を用いた水の可視光分解の研究においては反応機構が未解明な場合が多いため、この研究を通し、触媒活性に及ぼす鍵因子を解明できれば、より高活性な触媒を構築する上で重要な手掛かりを得ることが期待される。本年度は、ロジウム(II)二核錯体に電子伝達剤として機能するメチルビオローゲン(MV^<2+>)を共有結合で連結した、電子受容と触媒の二機能を有する新規ロジウム二核錯体触媒の合成と物性評価、並びに触媒機能評価を行った。合成によって得られたビオローゲンユニットを1つ、あるいは2つ有する錯体1,2について、質量分析(ESI-TOF)によって同定に成功した。これらの錯体についてサイクリックボルタンメトリーを用いて酸化還元特性について評価したところ、側鎖に導入したビオローゲンに由来する還元波が観測され、実際に電子受容能を有していることを確認した。この錯体1,2について、トリスビピリジンルテニウム(II)錯体(Ru(bpy)_3^<2+>)を光増感剤として用い、電子伝達剤非存在下で可視光照射による水素発生を試みたところ、いずれの錯体においても有意な水素生成が確認された。また、ビオローゲンユニットをより多く有している錯体2においてより高い活性が認められた。この測定結果から、触媒サイト近傍により多くの電子貯蔵を可能とする分子設計を行うことで、より高活性な光触媒を開発できる可能性が示唆された。このような電子貯蔵能を同時に有する光水素発生触媒の例は現状において少なく、重要な研究結果と言える。
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