1999 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア島嶼部諸民族の近代化に対する<心身>の反応と文化の創出
Project/Area Number |
10041018
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Section | 一般 |
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
染谷 臣道 静岡大学, 人文学部, 教授 (20091548)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 悦子 旭川医科大学, 医学部, 助教授 (10183948)
宮本 勝 中央大学, 総合政策学部, 教授 (40110085)
片多 順 福岡大学, 人文学部, 教授 (90037052)
板垣 明美 横浜市立大学, 国際文化学部, 助教授 (10221764)
|
Keywords | 東南アジア島嶼部 / 近代化 / 心身の反応 / 文化の創出 / 伝統文化 / 開発 / 貧国 / 不平等 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、近代化に伴う諸々の困難に対して人々がどのように対処しているかという問題について観察と聞き取りを更に深化させた。その結果、伝統文化と近代文化を適宜選択し折衷しながら事に対処している複雑な実態と課題が明白になった。要点を挙げれば以下の通りである。すなわち、(1)ジャワの「心学」は単に伝統の所産のみならず、西洋近代の所産も取り込んだ思想であり、インドネシアのみならず、広く現代世界の混迷に対して根源的な価値を持っていること、(2)ジャワの伝統音楽が高齢者の心を引きつけ、彼らの<心身>の健常に貢献している一方、現代音楽とミックスした新しい音楽が創出され、老若両世代を結び付けていること、(3)たくさんの人々が集散する市場は近代化しつつも、そこで起こる紛争に対しては伝統文化を駆使して予防していること、(4)近代化が進むリプロダクションの過程では伝統儀礼から逃れようとする志向性も見られたこと、(5)マレーシアのケダ州では複雑化する人間関係の紛争を伝統療法で処理してきたが、療法師の死去と代替者の不在が課題となっていること、(6)ハルマヘラでは狩猟採集民が食料生産者、家畜飼養者、テレビの聴取者となり、異民族と通婚するなど近代化に適応する一方で孤立化・周辺化する人々もいて二極化が見られたこと、(7)職を求めて子孫が転出する中で北スマトラ農村の高齢者たちは血縁者と地縁者の双方の存在によって適切に変化に対応していること、(8)中部カリマンタンでは開発に伴い、たとえば人間と一体的に捉えられていた森を現金を生む森として捉え返すなど人々は伝統文化を変容し世界的変化に適応しようとしていること、などである。
|