1998 Fiscal Year Annual Research Report
中国小説・戯曲の発展史における遊民の役割に関する研究
Project/Area Number |
10044002
|
Research Category |
Grant-in-Aid for international Scientific Research
|
Section | Joint Research . |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
磯部 彰 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (90143841)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石 昌渝 中国社会科学院, 文学研究所, 教授
劉 世徳 中国社会科学院, 文学研究所, 教授
磯部 祐子 高岡短期大学, 産業情報学科, 助教授 (00161696)
中里見 敬 東北大学, 文学部, 助教授 (30250963)
小川 陽一 大東文化大学, 文学部, 教授 (30007356)
|
Keywords | 中国白話小説辞典 / 盲者 / 浮遊民 / 紅巾軍 / 日用類書 / 宝巻 / 宗教蜂起 / 鴛鴦蝴蝶派 |
Research Abstract |
本年度の研究調査は、主として三つの観点から行なった。第一は、明清時代の小説・戯曲版本研究による作品分析、第二は、中国旧社会における大衆の流動の実態を、山西省の晋中・晋北から北京に至る一帯で調査した.,第三は、「遊民」という概念規定について共通理解を深め、士農工商以外をすべて「遊民」とするのは漠然としているので、各自が分担研究するテーマにおいて「遊民」像を描くという方針を決めた。具体的成果としては、研究全体にかかるものとしては、明清小説版本の調査・整理及び発見を盛り込んだ『中国白話小説辞典』の共編・出版をすることとなり、目下、編集中である。個別的成果としては、明清小説や宝巻の担い手は宋代以来盲者といった身障者であり、彼らが各地を流浪して広めていった状況を把握した(磯部彰)。戯曲では、清の嘉慶年間に起こった宗教蜂起と紫禁城攻撃の時、遊民達が劇団員のいでたちで参加したため、のち、道光帝によって南府の格下げと縮小へつながったことが判明した(磯部祐子)。王朝にとって、つねなる遊民と時なる流民の発生に対する施策は、緊急事であったため、多くの法令が出された。この点から、戯曲に見られる遊民などが法律や裁判制度で如何に扱われてきたかを見据えた分析がなされた(王永寛)。王朝交代期における階層分化による浮遊民の発生が文学の変質を齎した点については、六朝と唐宋の詩の上で検討中である(劉・王)。また、紅巾軍および李自成軍の組織内における文学者についても、野史等から資料を摘出中(石・韋)。日用類書の新興階層記事は、小説と深い関係にある点も判明した(小川)。 文学革命以前の清末小説、とりわけ鴛驚蝴蝶派と呼ばれる作品群について、その文体、叙事構造の分析を行った。従来、ややもすれば等閑視されがちちだった清末小説が、文体や叙事構造の観点からは、古典小説と近代小説の橋渡しをする重要な文学史的意義を持つことが、この分析をとおして明らかになりつつある
|
-
[Publications] 磯部 彰: "『西遊記』物語絵史略" 東北アジア研究. 3号. (1999)
-
[Publications] 小川陽一(共訳): "福建家譜と琉球久米村系家譜の比較考察" 歴代宝案研究. 10号. 23-37 (1999)
-
[Publications] 中里見 敬: "模倣,欧化,国化-中国文法革新討論の言説編制-" 東北大学中国語学文学論集. 3号. 29-49 (1998)
-
[Publications] 中里見 敬: "《傷逝》的独白和自由間接引語" 呉俊編『東洋文論-日本現代中国文学論』. 133-154 (1998)
-
[Publications] 磯部 彰: "越中国の関帝文献" 東北アジア研究. 2号. 283-312 (1998)
-
[Publications] 劉世徳: "曹雪芹祖籍辨証" 中国大百科全〓出版社, 556 (1998)