2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10116110
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
押川 文子 国立民族学博物館, 地域研究企画交流センター, 教授 (30280605)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木曽 順子 熊本学園大学, 経済学部, 助教授 (70192557)
落合 恵美子 国際日本文化研究センター, 助教授 (90194571)
粟屋 利江 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (00201905)
八木 祐子 宮城学院女子大学, 助教授 (70212272)
竹中 千春 (藤原 千春) 明治学院大学, 国際学部, 助教授 (40126115)
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Keywords | ジェンダー / 家族 / 主婦 / セクシュアリティ / 女子労働 / 女子教育 / メディア / 南アジア |
Research Abstract |
特定領域(A)(1)「南アジアにおける構造変動とネットワーク」(平成10年度〜12年度)の第5班として組織された本研究会は、南アジアにおける近代〜現代のジェンダーの変容の特質を、とくに「家族」に焦点をあてながら考察した。最終年度にあたる平成12年度は、5回の研究会、および 件の海外調査を実施し、引き続きそれぞれの担当課題に促しつつ研究を重ねるともに、同特定研究の最終成果として刊行を予定している叢書シリーズを念頭におきつつ成果の取りまとめをおこなった。また、その過程でまとめられた中間的成果については、同特定領域から刊行しているディスカッション・ペーパーおよびその他の雑誌論文などを通じて、すでに年度内から発表をはじめている。また平成10〜11年に引き続き、南アジアのジェンダーに関する主要図書、および独立以降を中心に商業的女性雑誌・男性雑誌など雑誌類の収集を実施した。とくに後者は、大衆レベルのジェンダー概念の形成・変遷過程を考えるうえで豊かな可能性をもつ資料群であるにもかかわらず、対象国内においてもまとまったコレクションが少ない文献である。 本研究会を通じて明らかにされた主要点は以下のとおりである。 1.19世紀半ば以降のジェンダー・イデオロギーとジェンダー関係の再編について、既存研究の批判的レビューとともに女性雑誌などについての独自の分析を行うことを通じて、(1)近年の研究傾向の偏り、とくにナショナリズム研究における女性=インド的シンボルという言説へ過度の傾斜による実態的なジェンダー関係の軽視傾向、(2)独立以降の「ミドル・クラス」の変質と主婦像の再構成、などについての認識を深めた。 2.近年における家族とジェンダーの変容については、生活形態や情報のグローバル化の進展が、ジェンダー概念・関係の西欧化をただちにもたらすものではなく、新しい状況や情報を加味したあらたなインド女性のモデルを創出や「文化モデル」としての家族像を形成する過程が、具体的に分析された。 3.上記の諸点を通じて、アジアにおける家族・ジェンダー研究に往々にして見られる伝統から近代=欧米へ、という便宜的な理解に対して実証的研究にもとづいた有効な反証をあげるとともに、もう一つの近代の過程としてのアジア家族・女性史研究への視野を広げた。この点は、2001年1月に、インド・デリーの社会開発研究センターで開催した研究会(落合、押川が参加)でも、インド側研究者と確認されている。
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Research Products
(16 results)
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[Publications] 押川文子: "インド英字女性雑誌を読む:90年代都市ミドル・クラスの女性言説"『地域研究論集』. 3巻2号. 63-93 (2000)
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[Publications] 粟屋利江: "白人女性の責務(The White Woman's Burden)-インド支配とイギリス人女性をめぐる研究動向"『歴史評論』. 612号. 63-77 (2001)
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[Publications] Toshie Awaya: "Drinking and Gender : British Abkari Policy, Nationalist Politics and After"Hideki Esho ed., Economic Development and the Quality of Life in South Asia. 211-227 (2000)
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[Publications] 粟屋利江: "ガルフ諸国へのインド人移民労働者:ケーララ州の事例を中心に"古賀正則他編『移民から市民へ:世界のインド系コミュニティ』. 235-246 (2000)
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[Publications] 臼田雅之: "神様になりそこねた話:バングラデシュの村の結婚をめぐる三つの情景"『コッラニ』. 16. 25-31 (2000)
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[Publications] 臼田雅之: "ラーマクリシュナと近代"島岩・坂田貞二編『聖者たちのインド』. 204-225 (2000)
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[Publications] 八木祐子: "北インド農村・クラスのスケッチ・ノート-インドの女の物語"『コッラニ』. 16号. 66-72 (2000)
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[Publications] 八木祐子: "北インド社会における身体と文化"『比較文化』(東京女子大学比較文化研究所). 47巻1号. 1-15 (2000)
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[Publications] 木曽順子: "南アジア系移民とカナダ労働市場"古賀正則他編『移民から市民へ-世界のインド系コミュニティ』. 221-234 (2000)
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[Publications] 田中雅一: "在日米軍の宗教生活-チャプレンの調査から"宗教研究. 323号. 200-201 (2000)
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[Publications] Masakazu Tanaka: "Sacrifice Lost and Found : colonial India and Postcolonial Lanka"Zinbun. 34-1. 127-146 (2000)
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[Publications] 田中雅一: "大東亜共栄圏のインド-戦中の邦語文献におけるカーストと民衆ヒンドゥー教"中生勝美編『植民地人類学の展望』. 45-69 (2000)
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[Publications] 竹中千春: "世界政治をグローバル化する"遠藤誠治・小林誠編『グローバル・ポリティクス』. 218-236 (2000)
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[Publications] 竹中千春: "ガンディー-民衆の神、国民の父"国際学研究(明治学院大学). 19号. 1-18 (2000)
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[Publications] 落合恵美子: "近代家族の曲がり角"角川書店. 269 (2000)
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[Publications] Edited by Fumiko Oshikawa,Hiroyuki Kotani: "Fussing Modernity : Appropriation of History and Political Mobilization in South Asia (JCAS Symposium Series, No.7)"Japan Center for Area Studies, National Museum of Ethnology国立民族学博物館・地域研究企画交流センター. 214 (2000)