1998 Fiscal Year Annual Research Report
ノックアウトマウスを使ったcPLA2の機能解析と新規PLA2の探索
Project/Area Number |
10212203
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
粂 和彦 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (30251218)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和泉 孝志 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (70232361)
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Keywords | ホスホリパーゼ / cPLA2 / MAPキナーゼ |
Research Abstract |
ホスホリパーゼには様々なタイプがあるが、その中でも、cPLA2(cytoplasmic phospholipase A2)はアラキドン酸に特異性が高く、その重要性が示唆されてきた。本研究では、このcPLA2の機能解析を進めている。本年度は、培養細胞を用いたモデル系を使い、cPLA2の活性化機構を詳細に解析した。cPLA2は、リン酸化と細胞内カルシウム濃度([Ca2+]i)上昇の両者で活性化されるが、MAPキナーゼの阻害剤、及び、MAPキナーゼを特異的に不活性化する脱リン酸化酵素(Pyst1)の過剰発現は、cPLA2の活性化をどちらも30%程度抑制することがわかった。この結果から、cPLA2がMAPキナーゼによるリン酸化で活性化されていることを証明することができた。次に、[Ca2+]i上昇とcPLA2の活性化について検討したところ、cPLA2の活性化は1分程度の短時間の[Ca2+]iでは起きず、最低でも5分程度の[Ca2+]iを必要とした。また、逆に5分程度[Ca2+]iが持続した後は、たとえ[Ca2+]iが終わっても、しばらくの間、cPLA2の活性化は持続した。この実験を、GFPで標識したcPLA2を用いて、蛍光顕微鏡下で、cPLA2の局在を観察しながら行ったところ、cPLA2は[Ca2+]iの上昇に伴い、秒単位の速やかさで、核膜近傍に移動するが、その活性が完全には起きない1分程度で[Ca2+]iが下がった場合は、速やかに、また細胞質に戻った。ところが、5分以上[Ca2+]iの上昇が続いた場合は、[Ca2+]iが下がった後も、核膜に局在したままで、細胞質には戻らなかった。この現象の機構は、いまのところ不明だが、短時間の[Ca2+]i上昇では活性化せず、逆にある程度の[Ca2+]i上昇が続くと活性化がその後も持続することは、cPLA2がある種の分子スイッチとして、細胞内情報伝達を司っている可能性を示した。
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[Publications] Hirabayashi, T., Kume, K.and Shimizu, T.: "Conditional Expression of the Dual-Specificity Phosphatase PYST1/MKP-3 Inhibits Phosphorylation of Cytosolic Phospholipase A2 in Chinese Hamster Ovary Cells" B.B.R.C.253. 485-488 (1998)
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[Publications] Hirabayashi, T., Kume, K.Shimizu, T.et al: "Critical Duration of Intracellular Ca2+ Response Required for Continuous Translocation and Activation of Cytosolic Phospholipase A2" J.Bio.Chem.274. 5163-5169 (1999)