2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10410010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 康邦 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (80012508)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星野 勉 法政大学, 文学部, 教授 (90114636)
湯浅 弘 川村学園女子大学, 人間文化学部, 助教授 (10230608)
関根 清三 東京大学, 大学院・人文社会研究科, 教授 (90179341)
山田 忠彰 日本女子大学, 人間社会科学部, 教授 (10220386)
船木 亨 熊本大学, 文学部, 助教授 (30190119)
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Keywords | 生命 / 有機体 / 幸福 / 生命倫理 / 生哲学 |
Research Abstract |
本年度の研究課題は、 (1)各分科会の、過去三年間の研究の再検討、総括を行うこと。 (2)西洋思想史における生命概念について、それぞれ個別研究の比較検討を通じて、総合的な観点を打ち出すこと。 以上の二点であった。具体的には、研究成果としては次のものが挙げられる。 (1)については、研究分担者の三嶋輝夫が、プラトンの対話篇におけるソクラテスの問答法を検討することを通じて、善き生がいかなるものであるかに関するギリシア的思考法の解明を行った。また、研究協力者の高橋幸平は、アリストテレスの最高善すなわち幸福の検討を通じて、生命の観点から捉えられた自然の秩序と人間の心の秩序、および社会の秩序の総合的把握が、アリストテレスにおいていかなるかたちで達成されているかを明らかにした。続いて、研究協力者の宮下聡子は、ユングの旧約聖書を素材にした神話研究の検討を通じて、古代民族の深層心理において生命及びその救済の問題がいかに把握されているかを明らかにした。研究分担者の熊野純彦は、レヴィナスの他者概念において、生命が操作の対象ではなく、畏敬を以て扱う対象であるという例を明らかにした。 (2)については、研究分担者の湯浅弘が、ニーチェにおける生概念をスタイルという観点から検討した。そして、古代から近代に至るまでの西洋思想上の生命概念の全体像を打ち出す試みを行った。さらに、研究代表者の佐藤康邦は、カントの『判断力批判』中の有機体の理論と美学的理論の関連の検討を通じて、自然科学的生命観と人文科学的生命観との一致と離反との二重の関係に関しての検討を行った。
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[Publications] 三嶋輝夫: "異郷の自己-『メディア』私論"青山史学. 18. 7-17
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[Publications] 羽入辰郎: "マックス・ヴェーバーの「魔術」からの解放(その三)-『倫理』論文における"calling"概念をめぐる資料操作について(1)-"青森県立保健大学紀要. 第1巻第1号. 99-107
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[Publications] 佐藤康邦: "様式の基礎にあるもの"叢書倫理学のフロンティアVII 『スタイルの詩学』(ナカニシヤ出版). 4-29
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[Publications] 湯浅弘: "ニーチェと価値相対主義の問題"ニヒリズムからの出発. 47-65
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[Publications] 船木亨(単著): "メルロニポンティ入門"筑摩書房. 253
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[Publications] 寿卓三: "応用倫理学の転換-二正面作戦のためのガイドライン"ナカニシヤ出版. 274(222-244)