2000 Fiscal Year Annual Research Report
「ヨーロッパ」における国民国家と言語の問題-EUの中のドイツとドイツ語-
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10410105
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
下宮 忠雄 学習院大学, 文学部, 教授 (90101592)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 経和 学習院大学, 文学部, 教授 (10080417)
宮下 茂 学習院大学, 文学部, 教授 (30080419)
轡田 収 学習院大学, 文学部, 教授 (90051325)
大貫 敦子 学習院大学, 文学部, 教授 (70176957)
青木 順三 学習院大学, 文学部, 教授 (90017616)
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Keywords | 国民国家 / 「文化」概念 / 多文化主義 / 「ヨーロッパ」概念 / ドイツ語の役割 / 英語とドイツ語 / 外国語学習における目標設定 / EUと言語 |
Research Abstract |
平成10年度、11年度の研究成果を踏まえ、最終年の今年度は、「ヨーロッパ」 「国民国家」を語る際に必ず現れる「文化」概念をさまざまな角度から再検討した。 1)「ヨーロッパ」というものが、確たるものとして存在するわけではなく、歴史的な規定、地理的な規定、政治的な規定、軍事的な規定、あるいは経済的な観点からの規定もEU以降、欠かせなくなっていることについては、検証した。それぞれの規定による「ヨーロッパ」は過不足なく重なり合うものではなく、ずれを内包している。同様に「文化」というものも、さまざまな要因が絡み合って生まれた概念である。つまり、文化という「もの」があるのではない。あるのは、「文化」について語ること、である。そして、どのような文脈の中でどのように「文化」が語られるのか、なぜ「文化」が語られるのか。そのような「文化」をめぐる、あるいは「文化」についてのDiskursが問題になるのではないか。そのDiskursを検証していくことではじめて「文化」概念を洗い出すことができるということが明らかになった。 2)「国民国家」の概念に対して、多言語主義や多文化主義は有効な批判となりうるかの検証を前年度に行った。その際、特にEUを中心に政治的、観点から分析した。EUが志向する一つに、多文化主義が挙げられ、その場合「それぞれの文化を同等に扱い、共生を目指すものである」ということが言われる。この場合もやはり「文化」概念が重要なものとして浮かび上がってくる。もはや無批判に「文化」ということがいえない以上、どのように、「多文化主義」をとらえたらよいのかという問題が出てくる。1)で検証した「文化」概念の検証の上にたって、この「多文化主義」がどのような文脈において語られているのか、その経緯を見ていくことが、「多文化主義」を単なる流行言葉、お題目としないためにも必要な作業である。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 下宮忠雄: "ドイツ語の構造"ドイツ語統語論の諸相-早川東三先生古希記念論集-(同学社). 379-392 (1999)
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[Publications] Shimomiya,Tadao: "European Tradition in the History of Linguistics in Japan"History of Linguistics. 1. 261-268 (1999)
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[Publications] Onuki,Atsuko: "Sexualitat, Macht und Sprache."ドイツ文学(日本独文学会). 105. 15-23 (2000)
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[Publications] 保阪良子: "代名詞は本当に「代」名詞なのか?-疑問代名詞、不定代名詞の照応関係を例にして-"ドイツ語統語論の諸相-早川東三先生古希記念論集-(同学社). 279-292 (1999)
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[Publications] 渋谷哲也: "「新しいドイツ映画」とは何か-その成立に関わるいくつかの事柄をめぐって-"学習院大学ドイツ文学会研究論集. 4. 69-93 (2000)
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[Publications] 鷲巣由美子: "スポーティな身体-ワイマール時代のスポーツとモードの言説にみられる女性身体-"学習院大学ドイツ文学会研究論集. 4. 95-122 (2000)
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[Publications] 下宮忠雄: "歴史比較言語学入門"開拓社. 228 (1999)
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[Publications] 下宮忠雄(共著): "現代ギリシャ語"朝日出版社. 154 (1999)