2000 Fiscal Year Annual Research Report
技術移転の諸断面からみた南・東南アジア経済開発戦略の動向と展望-マレーシア、インドネシア、インド,スリランカを事例として
Project/Area Number |
10430014
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Research Institution | Suzuka International University |
Principal Investigator |
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 恵理子 龍谷大学, 社会学部, 助教授 (40180244)
木之内 秀彦 鈴鹿国際大学, 国際学部, 助教授 (00204941)
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Keywords | 技術移転 / 外資導入 / サポーティング・インダストリー / 企業間リンケージ / 東南アジア / 南アジア |
Research Abstract |
専ら国内での文献調査研究を進めた.その過程で、本研究事例国のマレーシアおよび事例国ではないがタイでは、自動車関連産業、家電産業など一部の分野で地場中小企業が技術力を向上させ、進出日系企業の地場企業からの現地調達率も数年前に比して格段に上昇した例も散見された。しかし全体としては、事例4カ国を通して、外資導入による組立産業の誘致の「次の段階」、すなわち産業を更に高度化させ厚みを持たせるために地場中小企業をいかに十分に発達させるかという必須の課題は依然克服されていないという印象を強めた.その要因を列拳するなら、第1に進出外資企業も現地にサボーティングインダストリーが不十分なことを前提として、本国との分業体制を整えたり、同時に進出する外資系ないし系列下請け企業とのリンケージを形成する業務戦略を採用しがちなため、地場企業とのギャップが埋まらないこと.第2に、地場企業の資金調達は地場金融機関に専ら依存しがちだが、特に東南アジアの場合、短期中心の華僑型金融をベースとした金融風土に、或る程度の長期性を要する中小企業向け金融はもともと根付きにくいことに加え、80年代末の金融自由化政策に触発されて地場金融機関が海外資金に依存した投機的融資にのめり込んだことも地場中小企業に悪影響を及ぼした.第3に、事例4カ国に多少の違いはあるものの、日本に比べ現地従業員の転職率が高いため、人材育成と技術移転が進みにくく、進出企業もまた従業員の流出を見越して技術指導への投資に消極的になりがちだと観察されている.技術それ自体は、没文化的・普遍的でも、品質管理・在庫管理ではそれぞれの文化風土に育まれた「意識・価値観」に左右される面が大きく、文化的特性の違いも技術援助に依然立ちはだかる壁である.第4に、輸出加工区・自由貿易区に外資企業を集積する戦略は、そのエリア内の企業間リンケージは容易にしたが、エリア外の地場企業とのリンクを却って難しくしている実情が続いている.第5に、中国沿海部に日系を含め外資系の自動車・電子企業が殺到しはじめ、事例4カ国が従来享受してきた外資誘致競争での有利さは急速に失われつつあり、産業戦略の再検討を要請されている.以上の暫定的な結論に更に入念な検討を加えた上で最終的な成果報告を作成したい.
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[Publications] アーナンダ・クマーラ: "Open Economic Policies and the Car Industry in India"Suzuka International Journal CAMPANA. No.6. 201-209 (2000)
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[Publications] アーナンダ・クマーラ: "A New Venue for Foreign Investment in the South Asia : Case of Sri Lanka"Suzuka Internation Journal CAMPANA. No.7(発表予定). (2001)
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[Publications] 木之内秀彦: "ASEANと東南アジア安全保障の模索"鈴鹿国際大学紀要. 第7号(発表予定). (2001)
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[Publications] 青木恵理子: "Gender and Modernity"Berg(U.S.A)(出版予定). (2001)