1998 Fiscal Year Annual Research Report
水圏における溶存態及び懸濁態タンパク質の起源と動態に関する研究
Project/Area Number |
10440161
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田上 英一郎 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 教授 (50133129)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
次田 晧 東京理科大学, 生命科学研究所, 教授 (00028284)
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Keywords | 海洋環境 / 淡水環境 / 溶存態タンパク質 / 懸濁態タンパク質 / タンパク質 / ポリン / グラム陰性細菌 / 植物プランクトン |
Research Abstract |
琵琶湖・湖水中から生物の体内ではなく、非生物として存在する溶存態タンパク質分子を検出した。淡水環境中からこのようなタンパク質を検出した例はなく、世界で初めてである。検出したタンパク質分子のうちの一つは、そのN末端アミノ酸配列から、グラム陰性細菌(Bordetella pertussis)の外膜に存在するチャネルタンパク質であるポリンに極めて近いタンパク質であることがわかった。海洋環境中からは、やはりグラム陰性細菌(Pseudomonas aeruginosa)由来のポリンが溶存態タンパク質として存在する事が、本研究代表者により明らかにされている。現在、水圏に生息する特定の細菌中の特定のタンパク質が、溶存態タンパク質として選択的に蓄積するメカニズムは謎のままである。環境が大きく異なる琵琶湖及び海洋において、同様な現象が認められることは、この謎を解く大きな手がかりになるものと期待される。 海洋表層懸濁態タンパク質は、その中に生物も含むために多数のタンパク質を含み、従来から用いている一次元電気泳動法では、個々のタンパク質を分離する事は不可能であった。このようなタンパク質群に対して、本研究費で購入した二次元電気泳動法を適用した。その結果、十数個の主要懸濁態タンパク質を相互に分離することができた。N末端アミノ酸配列から、その内の一つは、真核生物の植物プランクトンのクロロプラストに存在するタンパク質であることがわかった。このことは、溶存態タンパク質の起源が原核生物である細菌である事と大きく異なっている。懸濁態タンパク質に二次元電気泳動法を適用し、主要タンパク質の起源を明らかにした例は無く、本研究が世界で初めてである。以上、本研究課題による初年度の今年度において、研究は極めて順諷に進み、世界で初めての結果が二つ得られた。
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