2000 Fiscal Year Annual Research Report
ホルモンの分子構造と脳下垂体の構造からみた生殖腺刺激ホルモンの進化
Project/Area Number |
10440246
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石居 進 早稲田大学, 教育学部, 教授 (90063528)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
輪湖 博 早稲田大学, 社会科学部, 教授
河崎 大輔 早稲田大学, 理工学研究科, 学振特別研究員
新井 雄太 早稲田大学, 教育学部, 助手
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Keywords | 生殖腺刺激ホルモン / 分子進化 / 脊椎動物 |
Research Abstract |
2000年度はこれまで全く報告のなかった爬虫類の生殖腺刺激ホルモン、すなわち濾胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)のβサブユニットをコードするcDNAのクローニングを行った。その結果、興味ある事実が明らかになった。クサガメのFSHβの構造はより下等な両生類のFSHβよりもより高等な鳥類や哺乳類のものと近いが、LHβは逆に哺乳類や鳥類のものとよりも両生類のものに近かった。 両生類は脊椎動物の中でも爬虫類、鳥類、哺乳類より分化が早かったので、爬虫類のFSHβを比較すると両生類のものが最も遠かったことは当然と考えられる。この考えは、FSHβ分子の進化速度はどの脊椎動物のグループでもずっと一定だったことを前提としている。 ところがLHβではこの関係が逆になっていた。両生類が爬虫類、鳥類、哺乳類より先に分化したことは化石の研究から明らかであることから、LHβについては前提条件のほうが間違っていることになる。すなわちLHβの進化速度は一定ではなく、高等になるに連れて進化速度が速くなっていったと仮定すれば、今回の事実は説明がつく。 すなわち、FSHβは普通に(一定速度で)進化していったが、LHβは高等になるにつけて進化速度が速くなったのであろう。Tajima(1993)の方法で統計学的検定を行った結果、鳥類や哺乳類のLHβの進化速度は両生類での進化より有意に速かったと結論された。 爬虫類の脳下垂体の構造は、主要な3部分の位置関係からみて哺乳類や鳥類よりも両生類に似ている。この点では脳下垂体の形態の進化はLHβと似ているといえよう。 また今回、オーストラリア肺魚には条鰭魚類にあるGTH-Iよりも、両生類以上にあるFSHに良く似た遺伝子があることも判明した。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Silverin,B.,M.Kikuchi and S.Ishii: "Effect of season and photoperiod on FSH in male great tits."Gen.Comp.Endocrinol.. 113. 457-463 (2000)
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[Publications] Wingfield,John C.,Susumu Ishii,Motoshi Kikuchi et al.: "Biology of a critically endangered species, the Toki (Japanese Crested Ibis) Nipponia nippon"Ibis. 142. 1-11 (2000)
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[Publications] H.Nakazawa,S.Kaji and S.Ishii: "Oscillatory electric potential on the olfactory epithelium observed during the breeding migration period in the Japanese toad, Bufo japonicus"Zool.Sci.. 17. 293-30 (2000)
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[Publications] Y.Aizawa,M.Kikuchi and S.Ishii: "Cloning of complimentary deoxyribonucleic acid encoding the beta subunit precursor molecules of gonadotropins in the reeves's turtle, Geoclemys reevesii "Proceedings of the 4^<th> congress of the asia and oceania society for comparative endocrinology..
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[Publications] Y.Komoike,M.Kikuchi and S.Ishii: "Cloning of complementary deoxyribonucleic acids encoding precursor molecules of the three pituitary glycoprotein hormone beta subunits in the Japanese toad, Bufo japonicus"Proceedings of the 4^<th> congress of the asia and oceania society for comparative endocrinology..
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[Publications] M.Kikuchi and S.Ishii: "Application of recent techniques in molecular and cellular biology to conservation of endangered birds"Proceedings of the 4^<th>congress of the asia and oceania society for comparative endocrinology..