1998 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者への虐待と支援に関する日本とスウェーデンの比較研究
Project/Area Number |
10470105
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
高崎 絹子 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (50100607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 好美 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (50280988)
佐々木 明子 山形大学, 医学部, 助教授 (20167430)
古川 哲雄 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (80134667)
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Keywords | 老人虐待 / 介護者 / 在宅ケア / 保健婦 / 地域ケアシステム |
Research Abstract |
老人虐待に関連して、日本で実施された調査研究と諸外国との比較を行った報告はほとんどないので、高齢者への虐待と支援に関する日本とスウェーデンの比較研究について、調査研究を実施した。今年度は、国際比較研究のための準備期間として、下記の活動を実施した。 1) 研究代表者らによる老人虐待に関する調査の検討・分析 1995年5〜9月に実施した老人虐待(埼玉、山形、福岡の3県の全市町村)の調査で171例の事例が把握された。国際比較のために、老人虐待という現象の構成要因を明確にする必要性がある。分析の結果、被害老人のADL、痴呆の有無などの要因、介護者(加害者)の健康状態、年齢、相談者の有無、介護上の困難などの要因、被害老人と介護者との関係、経済的側面、社会サービスの利用などの背景にある要因が関連していることがわかった。また、諸外国の文献レビューにより民族間の文化的な側面(慣習の違い)も考慮することが重要であることをふまえ、文化的な要因の特定化のために検討している・段階である。 2) 日本における老人虐待の電話相談(サポートライン)の実施・結果分析 1996年9月(開設時)より1998年7月までの相談記録117例のうち、虐待と考えられる事例が86例把握された。その結果、被虐待老人は女性が79.1%と多く、寝たきり度や痴呆の程度など、身体的な自立の低下が直接的な虐待要因ではなく、様々な要因が関係していることが示唆された。また、虐待の内容は、金銭的・物質的搾取が最も多くなっていたが、虐待事例の多くは財産問題がともなうことが把握された。相談者については、当事者(高齢者と介護者)は身体的虐待に関わる訴えが多いのに対し、第3者からは介護拒否・放任の割合が多くなっていた(p<0.05)。現在、相談者のニーズ分析等もすすめている段階である。 3) 比較研究の基盤づくりおよび外国文献のレビュー 一昨年、昨年度は研究代表者らとスウェーデンの研究者と交流を行い、比較研究を行うための本格的な調整・基盤づくりをした。スウェーデンで実施された調査研究の文献と日本の文献より、今回の研究に必要な国際比較のためのItemやFactorを抽出し、老人虐待の評価基準あるいは指標づくりの作業を行っている。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 高崎絹子: "老人虐待の防止と支援" エキスパートナース. 15・2. 30-33 (1999)
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[Publications] 高崎絹子: "老人虐待の実態と介護保健制度の課題" 現代のエスプリ. 380. 172-184 (1999)
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[Publications] 佐々木明子: "高齢者虐待緒地域ケアシステムに関する日本とスウェーデンの比較研究" 平成10年度日本学術振興会特定国派遣研究 研究報告書. 1-6 (1998)
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[Publications] 高崎絹子,谷口好美: "老人看護の課題-老人虐待と家族看護を中心に-" GERONTOLOGY. 9・3. 61-66 (1997)
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[Publications] 高崎絹子,佐々木明子 谷口好美他: "高齢者の虐待と支援に関する研究(2) -3県の実態調査から-" 保健婦雑誌. 53・5. 383-391 (1997)
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[Publications] 高崎絹子,佐々木明子他: "老人虐待の予防と支援" 日本看護協会出版会, 294 (1998)