1999 Fiscal Year Annual Research Report
心筋細胞を標的とする心筋選択的遺伝子導入法を応用した経静脈遺伝子治療の開発
Project/Area Number |
10470273
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
澤 芳樹 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (00243220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 元延 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (90291442)
福嶌 教偉 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (30263247)
大竹 重彰 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (50243209)
金田 安史 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (10177537)
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Keywords | 遺伝子導入 / 虚血性心疾患 / 肝細胞増殖因子 / 血管新生 |
Research Abstract |
近年,虚血性心疾患に対する内科的,外科的治療は向上したが,依然としてPTCAやバイパス術の適応とならない,狭小冠動脈症例が存在する.肝細胞増殖因子(HGF)は、強力な血管増殖因子としての有用性が近年報告されており,心筋虚血領域におけるその応用が期待される.そこで本年度は,心臓における遺伝子治療の臨床応用をめざし,ビーグル犬心筋梗塞モデルに対するHGF遺伝子の心筋への直接注入による遺伝子導入法を試みた.ビーグル犬を麻酔下に開胸し,冠動脈左前下行枝を第一対枝分岐直後で結紮し,心筋梗塞モデルを作成した.4週間後に再度開胸し,梗塞範囲と正常範囲との肉眼的境界を虚血領域,回旋枝の灌流域を正常対照領域とした.両領域の心機能(局所壁運動能,局所血流量)を計測の後,虚血領域の心筋内にHGFもしくはコントロールとしてLacZのcDNA plasmidを直接注入した.さらに4週間後に再び開胸し,前回同様に心機能を計測した後,犠牲死させ抽出した心筋の凍結切片を作成し,Von Willebrand抗体による免疫染色をおこない血管新生効果を確認した.遺伝子投与前後の虚血領域の局所壁運動能は,LacZ投与群で変化しなかったのに対し,HGF投与群では有意な改善を示した.また,虚血領域の局所血流量もLacZ投与群では変化なく,HGF群では正常領域同等にまで有意に増加した.また,免疫染色では新生血管の増殖による心筋内毛細血管数は,HGFを投与した虚血領域では対照領域に比し有意に増加していた.以上より,HGF遺伝子の心筋内直接注入は,心筋における新生血管増殖を促し,血流量の増加と局所心機能の改善をもたらすと考えられる.このことから,心筋における血管新生を目的としたHGF遺伝子導入は,遺伝子の直接注入によって達成され,今後虚血性心疾患に対する新しい治療戦略となる可能性があると思われる.
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