Research Abstract |
本年度は,各種高齢者競技スポーツ大会において優勝,あるいはそれに準ずる成績を有する80歳以上の6人の高高齢者エリートアスリートを全国から集め,彼等の身体的能力の測定,およびライフスタイルに関する調査を行った.被検者の競技種目は,陸上競技,水泳,テニス,居合道,登山であり,平均年齢は83.8±2.6歳であった.測定項目としては,磁気共鳴映像法を用いた大腿部および股関節構成筋群の筋量測定,最大等速性膝伸展・屈曲筋力,推定の最大酸素摂取量,骨密度,そして,体力テストとして10m障害物歩行,6分間歩行,長座位体前屈,上体おこし,開眼片足立ち,ペグボード,落下棒反応,垂直跳び、立ち幅跳び,反復横跳びであった.さらに,質問紙法を用いてこれまでの運動歴,日常の生活・運動状況を調査した.その結果,筋量は一般人と同様なレベルまで減少しているにもかかわらず,筋力,特に高速域における筋力発揮は非常に高い値を維持していた.最大酸素摂取量および骨密度においても一般高齢者よりも明らかに高い値を示し,特に骨密度は,部位によっては若齢一般人の最大骨量と同等,あるいはそれ以上の値を示した.体力テストにおいては,文部省新体力テストの75歳以上の基準で判断した場合,総合評価Aと非常に優れた運動能力を有し,特に,歩行能力が優れていた.これらの結果は,本研究における高高齢者エリートアスリートが一般高齢者よりも非常に優れた運動能力を有していることを実証しているとともに,定期的で長期間の運動が筋骨格系の老化を抑制し,高い運動能力を維持する上で有用であることを示している.本年度は,測定方法の検討,被検者集めに時間がかかり,被検者数を増やすことができなかったが,来年度は,アスリートの被検者を約20人位まで増やし,さらに,対照となる一般高齢者の測定も行う予定である.
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