2000 Fiscal Year Annual Research Report
沖縄における「日本的」および「沖縄的」アイデンティティのあり方に関する総合的研究
Project/Area Number |
10490020
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
石田 正治 九州大学, 大学院・法学研究院, 教授 (50168233)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安達 義弘 福岡国際大学, コミュニケーション学部, 教授 (60175891)
和田 仁孝 九州大学, 大学院・法学研究院, 教授 (80183127)
石川 捷治 九州大学, 大学院・法学研究院, 教授 (30047740)
仲地 博 琉球大学, 法文学部, 教授 (80045202)
比屋根 照夫 琉球大学, 法文学部, 教授 (10045172)
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Keywords | 沖縄 / アイデンティティ / 祖国 / 物語 / 市民運動 / 太田朝敷 / 社会主義運動 / 祖先崇拝 |
Research Abstract |
本研究は、沖縄地域をとりあげ、日本国内の周辺に位置し、歴史的にも複雑な経過をたどって明治初期に日本社会に組み込まれた沖縄の人々のなかに、ナショナル・アイデンティティおよびローカル・アイデンティティがいかなる様態で体現されているのかを明らかにしようとした。6人による共同研究であったが、各研究者はそれぞれ、祖国物語形成、市民運動、紛争処理、宗教運動、国民統合、および共同体組織の各場面に焦点をあて、ナショナル、およびローカル・アイデンティティが状況に応じながらいかに多様に表出されるのかを明らかにした。 物語形成論では、沖縄の代表的言論人であり、琉球新報の創立者でもある太田朝敷をとりあげ、彼が生産組合運動に関りながら日本への祖国イメージを変化させていく状況が明らかなった。市民運動論では、第二次大戦後の米軍統治下での祖国復帰運動をとりあげ、運動の過程での「大和」と「沖縄」への関わり方の時代的変遷が明らかになった。紛争処理論では、沖縄における紛争処理をとりあげ、紛争処理の場面で沖縄的論理と本土的論理が意図的・戦略的に組み合わされながら自己の正当性が主張される状況が明らかなった。宗教運動論では、沖縄の祖先崇拝が沖縄的アイデンティティを不断に生み出し続けている一方で、本土的宗教の受容とともに本土的価値観や思考様式が受け入れられていく状況が明らかになった。国民統合論では、明治・大正期における沖縄の社会主義運動をとりあげ、日本の中での周辺地域としての沖縄の中での、あるいは沖縄出身者の海外での活動をとおして、日本を相対化しようとする運動が展開されたことが明らかになった。共同体組織論では、共同体編成の場面をとりあげ、本土的編成原理を志向しつつ沖縄的原理を払拭しきれない状況、および編成過程における帰属意識の揺れが明らかになった。
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