1998 Fiscal Year Annual Research Report
生理食塩水に代わる胸腔・腹腔洗浄液の開発と基礎的研究
Project/Area Number |
10557117
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
標葉 隆三郎 東北大学, 医学部, 講師 (20192106)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
知久 一雄 テルモ研究開発センター, 主任
伊藤 恒敏 東北大学, 医学部, 教授 (90004746)
田村 眞理 東北大学, 医学部, 教授 (20124604)
佐山 淳造 東北大学, 医学部・附属病院, 助手 (60292322)
宮崎 修吉 東北大学, 医学部, 助手 (50282075)
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Keywords | 生理的食塩水 / 侵襲 / サイトカイン / IL-6 |
Research Abstract |
生理的食塩水は、創や腹腔、胸腔の術中の洗浄液として一般に用いられているが、生理的食塩水は、組織への侵襲は無視できない。そこで、これにかわる新しい、生体にやさしい創・腹腔洗浄液の開発をめざして研究をすすめた。まず、生体にやさしい液の性状を基礎的にラットをもちいて検討したところ、ウサギの腹膜中皮細胞の実験から、PHが中性であること、等浸透圧であること、塘を含む細胞外液組成であることが最低条件であった。このようは条件をみたす洗浄液を試作し、生理的食塩水と比較検討した。その結果、腹腔からの水分の吸収は、洗浄液で著明に少なく、電解質(特にCa)の変化がすくなかった。また、PEG4000を用いた色素漏出試験では、生理的食塩水では、漏出が見られ、腹膜上皮細胞の損傷が示唆され、洗浄液では、有意に漏出が少なかった。また、洗浄後の腹水中のサイトカイン(IL-6)の産生をみると有意に試作した洗浄液の方が産生が少なく、また、血液やLPSを腹腔内に投与したマウスの実験でも同様な結果がえられ、洗浄液は、腹膜への侵襲が少ないと考えられた。 以上から、生理的食塩水は、最適の腹腔洗浄液ではなく、生体のもっと適した洗浄液の開発が必要で、生体反応の軽減と安全な手術と周術期経過につながると考えられる。
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