1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610042
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
北村 清彦 北海道大学, 文学部, 助教授 (70177864)
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Keywords | 宇宙 / 非対称 / らせん構造 / 芸術作品 / ロジェ・カイヨワ / ドゥルーズ=ガタリ |
Research Abstract |
本研究は現代における科学と芸術の構造的類似性を明らかにすることを課題としている。そのために本年度は宇宙物理学の歴史的展開を検討し、そこで表象される宇宙像が同心円的な対称性をもったものから、非定形なものへと変化していることが明らかになった。また同様のことが分子構造の点からも確認することができ、宇宙を構成している物質が例外なく非対称的(キラル)であることが判明している。現在は、とりわけ立体的な非対称形である「らせん構造」を今後の研究の中心的形象として見定めることの是非を、科学的な側面と哲学的な側面から考察している。すなわち一方において活性力をもった物質に「らせん構造」は特徴的であるということをロジェ・カイヨワは鉱物から動植物、さらに生命現象にまで観察しているが、他方、ドウルーズ=ガタリはそのような物質の生成変化を「欲望」と呼び、それが「らせん運動」の強度を持っていると言及しているのである。さらにこうした事態を芸術の問題にまで及ぼすためには、作品分析がなされなければならない。それはひとつには具体的に宇宙を表象するような作品が、またたとえば「バロックの美学」のようにあるひとつの時代様式がこぞって非対称的な「らせん構造」を採用したことなどがとりあげられなければならない。だがそれ以上に重要なのは、特に現代芸術における時間・空間の表現である。額縁枠を持たない巨大なオール・オーバーの平面作品、あるいはその台座からはずれ量塊的であるよりも内部に空間を取り入れたり、時間関数によって可動的なった立体作品、それらは直接的に宇宙を表象するものではないが、いわば「隠喩的な」宇宙表現であり、かえって現代の宇宙物理学の表象する宇宙像と近似的であることが明確になったのである。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 北村 清彦: "繰り返される自己の物語-ポール・リクールの自己論-" 北海道大学文学部紀要. 47-1. 1-27 (1998)
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[Publications] 北村 清彦(共著): "芸術学を学ぶ人のために" 世界思想社, 336 (1999)