1998 Fiscal Year Annual Research Report
健常者の妄想的観念の研究:精神分裂病の妄想との比較研究と発生論的研究
Project/Area Number |
10610068
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丹野 義彦 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (60179926)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
椎原 康史 群馬大学, 医学部, 助教授 (80178847)
|
Keywords | 精神分裂病 / 妄想 / 妄想的観念 / 幻覚 / 幻聴様観念 / 質問紙法 / 構造化面接法 |
Research Abstract |
精神分裂病には妄想・幻覚・自閉などの症状がある。本研究は,妄想と幻覚のアセスメント技法を新たに開発し,それを用いて症状の成立機序について検討し,いくつか興味深い知見を得た。 1. 妄想の内容的側面について,質問紙によるアセスメント技法である妄想観念チェックリストを新たに開発した。これを用いて,健常者の妄想的観念について調べ,多変量解析を用いて構造化を試みた。その結果,正感情と負感情,自己と他者の方向性という2つの次元で構造化できることを明らかにした。また,ライフイベントによって妄想的観念が高まることを,健常者の縦断調査から明らかにした。 2. 妄想の形式的側面について,半構造化面接によるアセスメント技法である対人観念多次元面接法を新たに開発し,本年度は,その信頼性と妥当性を検討するため,健常者を対象とした調査をおこなった。その結果,信頼性については十分高いことを確かめた。精神分裂病を対象とする臨床研究は来年度におこなう予定である。 3. 幻覚の体験頻度について,質問紙によるアセスメント技法である幻聴様体験尺度を新たに開発した。本年度は,健常者を対象とした調査をおこなった。その結果,健常者の幻聴様体験の頻度は想像されるより高いことを明らかにした。また,ライフイベントによって幻聴様体験が高まることを,健常者の縦断調査から明らかにした。 4. 幻覚の形式的側面について,半構造化面接によるアセスメント技法である幻聴構造化面接法を新たに開発した。精神分裂病の患者を対象として実施し,多変量解析を用いて構造化を試みた。その結果,自我障害の有無,体験への感情の正負という2つの次元で構造化できることを明らかにした。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] 丹野義彦: "An aberrant judgmental pattern of schizophrenic patients in weight discriminations" Psychiatry and Clinical Neurosciences. 54・4(印刷中). (1999)
-
[Publications] 石垣琢麿・丹野義彦: "The ability of signal detection of patients with auditory nallucinations." Psychiatry and Clinical Neurosciences. 54・4(印刷中). (1999)
-
[Publications] 丹野義彦: "健常者の幻聴様体験を調べる質問紙の作成" 日本健康心理学会第11回大会発表論文集. 11. 96-97 (1998)
-
[Publications] 丹野義彦: "健常者の幻想的観念のタイプ分けと多次元アセスメント" 日本心理学会第62回大会発表論文集. 62. 149 (1998)
-
[Publications] 丹野義彦: "心理アセスメントは精神病理学と心理治療にどう役立つか" 精神科診断学. 9・3. 379-388 (1998)
-
[Publications] 石垣琢麿・丹野義彦: "妄想と幻覚の認知的アセスメント" 精神科診断学. 9・3. 513-524 (1998)
-
[Publications] 丹野義彦: "心理測定法第4章・第5章" 放送大学教育振興会, 18 (1998)