Research Abstract |
本研究は,競技,テスト場面におけるパフォーマンスと感情状態を測定し,その関係を探ることが目的である。「あがり」状態や感情状態の測定には,「あがり」経験質問紙(有光・今田,印刷中),多面的感情状態尺度短縮版(寺崎・岸本・古賀,1994)を使用することが望ましい。しかし,前者は項目数が52項目存在し,被調査者の負担を考えると実際場面での使用は適切でないものと思われた。そのために,まず質問項目数の短縮を行う必要があった。 そこで本年は,まず「あがり」経験質問紙の短縮版を作成した。具体的には,436名の大学生に「あがり」経験質問紙(52項目)への回答を求め,確認的因子分析により因子構造の確認を行った。分析の結果,因子負荷量が高い項目(6因子に2項目ずつ,計12項目)を因子を代表する項目として,12項目からなる短縮版の「あがり」状態質問紙を作成した。 さらに,本年度は短縮版質問紙が実際場面で回答可能かどうか予備的な検討を行った。手続きとしては,14名の演劇部員を被調査者として,演技の前,演技中(演技後に想起),演技の後に「あがり」状態質問紙(12項目,4点尺度)と多面的感情状態尺度短縮版(40項目,4点尺度)に回答を求めた。各質問への回答は,演技に支障のない範囲で行うことが可能であった。また,「あがり」状態質問紙および多面的感情状態尺度の評定は,演技の前,中,後で予測通り変化していた(例:演技前から演技中にかけて不安感が上昇した)。以上のことから,本研究で用いた質問紙により,実際のパフォーマンス場面における感情状態を測定することが可能であることが分かった。 11年度は,競技およびテスト場面で調査し,パフォーマンスの成功,失敗に関わる感情状態を明確にする予定である。
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