1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610091
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Research Institution | Hijiyama University |
Principal Investigator |
吉田 弘司 比治山大学, 現代文化学部, 助教授 (00243527)
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Keywords | 顔認識 / hollow face錯視 / 3次元形状の知覚 |
Research Abstract |
対象物の視覚認識過程の初期段階では,視点に依存しない対象中心の記述がなされた3次元の表象を構築することが重要といわれている。しかしながら,顔認識の初期過程においては,この3次元構造に関する分析処理は多少異なるかもしれない。たとえば,凸状の構造である人の顔表面を裏側から観察すると,それは凹状の表面として見えるべきであるのに,我々には凸状にしか知覚されないこと(hollow face錯視)が知られている。平成10年度研究においては,人の顔表面の3次元座標値を非接触型3次元形状入力機によってコンピュータに取り込み,それを3次元画像生成プログラムでレンダリングしたものに種々の大きさの両眼網膜非対応を与え,hollow face錯視の強度測定を試みた。また,この錯視強度の測定は,顔の呈示方向(2水準:正立,倒立)×レンダリング時のライティング方向(2水準:上,下)×顔がもつテクスチャの油有無(3水準:テクスチャのないもの,顔写真をテクスチャとしてマッピングしたもの,顔写真を白黒反転させたネガ画像をマッピングしたもの)の条件を組み合わせて行った。現在までの実験結果によると,錯視強度は,顔の呈示方向が正立の場合,ライティング方向が下からの場合,さらには,顔写真をテクスチャとしてマッピングした場合により大きくなることが示された。また,テクスチャ条件に関しては,ネガ画像をテクスチャとしてマッピングした場合でも,テクスチャのない顔より大きな錯視強度が認められた。hollow face錯視には,顔刺激に特有な部分と,対象を凸状に知覚する我々の視覚認識系の一般的な傾向を反映する部分が混在しているといわれるが,本研究の結果より,顔に特有な部分が大きいことが示された。今後はさらに,3次元的な視覚情報が人物同定や表情判断にどのような影響を及ぼしているかを合わせて検討する予定でいる。
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