1999 Fiscal Year Annual Research Report
制作技法からみた船絵馬の時代考証と作画復元のための研究
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10610313
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Research Institution | Gangouji Institute for Research of Cultural |
Principal Investigator |
山内 章 財団法人 元興寺文化財研究所, 保存科学センター, 研究員 (90174573)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日高 真吾 財団法人 元興寺文化財研究所, 保存科学センター, 研究員 (40270772)
菅井 裕子 財団法人 元興寺文化財研究所, 保存科学センター, 研究員 (20250350)
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Keywords | 船絵馬 / 量産型絵馬 / 彩画技法 / 図柄 / 背景 / 下地 / 基底材 / 絵具の種類 |
Research Abstract |
奉納年(宝暦2年〜明治44年)が記載された絵馬136点、未記載または不明の絵馬80点、合計216点を調査し次の所見を得た。 1.基底材は天保年間以前は全て板地で、板に紙を貼り彩画した絵馬は天保5年が初見である。 2.船の図柄を木版で刷った絵を画面に貼った絵馬は嘉永7年が初見で、従来の弁才船を描いた明治期の絵馬のほとんどは版画を用いている。 3.彩色の下地絵具は天明8年までは黄土下地または下地無しで、胡粉下地は寛政元年が初見である。寛政から弘化までは胡粉下地が多いものの黄土下地も見られ、弘化年間以降は胡粉下地または下地無しで、黄土下地は見られない。 4.海と空の色は、藍を主体色にした彩色・合成群青を主体色にした彩色・下地色(黄土・胡粉)がある。藍は宝暦2年から文久3年まで、合成群青は文久3年が初見で明治期ではほとんどの絵馬に見られる。また、明治期の絵馬では空や雲の彩色に真鍮泥と推測する金色の顔料が多用され、本調査では明治4年が初見である。 5.雲の特徴は、(1)宝暦から明和にかけて、丹・ベンガラ・草緑・胡粉で配色した帯状の図柄が見られる、(2)天明から弘化にかけて、まがい粉と推測する粒状の顔料が雲の彩色に用いられ、霞を表現するように船の周囲にまがい粉を蒔いた絵もある、(3)明治期に入ると、細かい粒子の真鍮泥で雲形を平彩色した絵馬が多く見られる。 6.背景に住吉大社が描かれるのは天明8年〜万延2年で、文久2年以降明治期の船絵馬の背景は、山並み等の陸地を描くかまたは何も描かないかで、住吉大社は見られない。 7.太陽は、明和9年〜天保2年は中空に円形で描かれ、天保5年以降は水平線に半円形の日の出を描く図柄が主流になる。また嘉永3年以降の絵馬には日の出に光を表現する線描が加わり、明治期の絵馬で背景に日の出が描かれる場合は、全て日の出には光が線描される。 8.黄土下地の場合、赤系色の彩色に朱を用いた絵馬は80点中10点で、70点は丹またはベンガラである。 9.黄系色はほとんどの場合黄土が塗られるが、船体を版画で描写した絵馬の版画部分の彩色は藤黄が使われる。
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