1998 Fiscal Year Annual Research Report
近世・近代移行期における運輸機構展開過程の研究-水上輸送を中心に-
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10610316
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
渡辺 英夫 秋田大学, 教育文化学部, 助教授 (20191786)
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Keywords | 水運機構 / 船舶調査表 / 船員調査表 |
Research Abstract |
3年計画の最初の年にあたる本年度は、大きく分けて次の二方向から研究を進めた。 その一は、近代・明治20年代の海運関係史料の収集に努めた。国立公文書館に所蔵される「船名録」「汽船表」「海員調査票」「水火夫調査票」等の史料群を一括して写真複写収集した。これらは以前に収集した「日本型船舶表」等と対をなし、明治政府が日清・日露戦争を前に船舶・船員のすべてを全国規模で調査したものである。また、これに関連して三菱経済研究所付属史料館に所蔵される「船員履歴書」等についても写真収集した。これによって、明治20年代の船舶と船員の状況や、日本郵船配下の船員の出身地などが知られ、近世期からの連続と非連続面について考察するための基礎史料が得られた。今後、これらのデータベース化をはかり、分析を進めたい。 その二は、近世期に水運輸送網が最も大規模に展開した関東地方、江戸を核とした利根川水系の河川水運について、その運航実態を解明した。風力を主たる動力源とした和船においては、風雨の天候のみならず下流域では潮位をも計算に入れた航法が採られていたこと、あるいは、夜間の遡上運航など、これまで知られていなかった多くの航行実態を解析した。またそれ以上に、船頭の副収入獲得の手段として「帆待ち稼ぎ」が公認されていた点の解明は意義ある成果であった。船主-船頭・水主の雇用関係の解明とあわせて、これらが明治期にどのように展開していくのか、その前提を用意した研究といえる。 もう一つ付け加えられるとすれば、沖縄県石垣市への調査実施にある。沖縄本島で多くの近世史料が失われた反面、八重山地方には今なお近世史料が伝存し、海運、漂流、特産品の流通、対外関係など多方面の地域史研究が可能であることを確認した。
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Research Products
(1 results)