1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610317
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山本 隆志 筑波大学, 歴史・人類学系, 教授 (50191416)
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Keywords | 湿田 / 乾田 / 干田 / 砂田 / 池 |
Research Abstract |
荘園時代における耕地・農法のあり方を検討するため、今年度は次の作業を実施した。〔1〕『平安遺文』全11巻収録文書から田・畠の種目を示す字句を選定、データ・べ一ス化し、それを昨年度作成の『鎌倉遺文』データ・べ一スと総合した。「河原田」・「窪田」などは共通するが、『平安遺文』独自のものとして「浮田」・「円田」のように形状を示す名称のほかに、「秣田」のように用益形態を示す名称も見える。全体的な検討は今後の作業だが、用益形態・農法の考察に寄与できると思う。〔2〕荘園現地調査はまず和泉国日根荘で実施し、池の分布状況や池と田との関係を、絵図の吟味とともに、検討した。池は山裾と野原に分布するが、野原は絵図では「荒野」である。田はその間に位置して、いわば谷戸田である。従って池水は田植え時というより夏の乾燥期の用水と利用されている、と想定される。また同国の重源築造の猿山池・堤も調査したが、これらは50余村を潤す大用水源であり、田植え・乾燥期の両方に利用された、と考えられる。さらに上野国山名郷・新田荘では「冷田」・「ふけた」の調査をし、湿田の認識を昨年と同様に深くした。下野国佐野荘中村郷では「沼田」と「砂田」が併存していて、河川沿いには湿田・乾田が同居している様子も検討した。このことから、乾田は今日の意味とは異なり、干田に近い田地とも想定出来る。
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Research Products
(2 results)