1998 Fiscal Year Annual Research Report
ジャーヒリーヤ時代からイスラーム時代にかけての暦・巡礼・交易システムの変遷
Project/Area Number |
10610365
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Research Institution | Tokyo Jogakkan Junior College |
Principal Investigator |
医王 秀行 東京女学館短期大学, 国際文化学科, 助教授 (20269426)
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Keywords | イスラム / ジャーヒリーヤ時代 / 巡礼 / メッカ |
Research Abstract |
イスラム化依然のジャーヒリーカ時代においては,メッカ周辺の巡礼行事にあって,多数の部族が巡礼行事を円滑に実施するため,役割分担を行っていた。中でもキナーナ族は暦の調整を司どり,太陰暦からくる季節とのずれ周期的に閏月を入れることで太陽暦との調整をしていた。これによってメッカの巡礼行事は春頃に行なわれ,アラビア半島,地中海地域の巡礼,交易システムは季節に順応していたことが分かった。このシステムを破壊するためにイエメンのキリスト教勢力がメッカに受攻したことがあったが,その背景には春に行われるキリスト教の復活祭に巡礼者を集めようという意図があった。暦月を周期的に入れる際に,神聖月をどのように設定するかという問題も重要であった。巡礼を平和的に実施するため,戦争,流血行為が禁止される神聖月であったが,閏月を入れた場合,どの月が神聖月になるのか,従来疑問視されていたが,年に4回神聖月を設定する方式は変化がなかったと思われる。もっとも,部族間の抗争,略奪などで,巡礼祭が円滑に実施されない場合,神聖月は延期されることもあった。閏月を入れる周期はユダカ暦のそれに合わせてついたことが推測される。メッカはアブラハムにちなむ聖地としても重要であり,セム的信仰の中心地としてユダカ教徒やキリスト教徒の巡礼者も集めていたことが背景にあったと考えられる。閏年の周期については今後の課題としたい。
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