1998 Fiscal Year Annual Research Report
近世日向沿岸漂着唐船・琉球船と密貿易に関する基礎的研究
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10610368
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Research Institution | Miyazaki Women's Junior College |
Principal Investigator |
黒木 國泰 宮崎女子短期大学, その他の部局, 教授 (90132513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上原 兼善 岡山大学, 教育学部, 教授 (20107204)
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Keywords | 鎖国 / 隣藩為知 / 漂着唐船・琉球船 / 長崎聞役 / 長崎奉行 / 龍牌 / 信牌 / 長崎回送 |
Research Abstract |
1. 延岡内藤藩の記録の中に、高鍋藩等の隣藩からの唐船漂着為知情報に基づいた内藤氏から老中への届書の写しを発見した。さらには同じく内藤藩における漂着唐船・琉球船に対する纏まったマニュアルの抄本を宮崎県立図書館で発見し、解読を進めている。その原本は明治大学が所蔵しているので、11年度には、明治大学の内藤家文書の調査を行いたい。 2. 高知の五藤家文書および安芸市立歴史民俗資料館に所蔵の漂着唐船・琉球船関係史料を調査、撮影し、一部はCD-ROMに納めた。本調査の中で、正規の外交関係がない日清間にあって、清朝地方官から日本への難民送還の宛名が「日本国王」とある咨文を発見した。日本からの回咨文の差出人は、長崎奉行であった。清朝サイドでは、冊封体制の外縁に日本を組み込んだ形をとっていたといえるのかも検討課題としたい。 3. 東九州での海難難民の救護・回送のシステムと清朝中国の海難難民への対処の仕方とを比較すると、東九州への海難難民に対しては、次のようであった。(1)難民の上陸を許さない。船中に収容する。(2)ただし破船の場合は仮小屋に収容する。(3)人質をとる。(4)漂着地の藩は、漂着に至った経緯・氏名・年齢・身分・宗教事項・積荷の内容と数量を記録して、老中・長崎奉行に報告し、隣藩にお知らせする。(5)漂着地の隣藩もまた老中・長崎奉行にお届けすると共に、難民を監視する。(5)回送ルートの各藩から薪水等の物資や曳航の援助を受けながら、長崎に至る。(7)長崎で難民は未決囚牢獄に収容され、一貫して犯罪者と同様の待遇を受ける。これに対して、中国に漂着の日本人難民への処遇は、乾隆2年(1737)以後は救護・送還の体制が整い、皇帝から五爪の龍牌を下賜されるという特別な恩典に浴した。また漂着地の地方官や洋銅商人による手厚い保護を受け、寺・廟・旅宿・店舗に宿泊、護送されて長崎に送還された。
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Research Products
(2 results)