1998 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ近世領邦都市の統治構造-中間権力の観点からの絶対主義論-
Project/Area Number |
10610377
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
神寳 秀夫 九州大学, 文学部, 教授 (90118331)
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Keywords | ドイツ / 近世 / 領邦都市 / 自由都市 / 中間権力 / 絶対主義 / 支配契約 / 都市参事会 |
Research Abstract |
研究課題「ドイツ近世領邦都市の統治構造-中間権力の観点からの絶対主義論-」の達成のため、本年度は、(i)「都市財政」と(ii)「初期近世段階での都市参事会および同職組合の『中間権力』としての性格」を解明することに努めた。基本的史料として利用したのは「会計簿」、『年代記』、領邦都市への降格後の君主と市民との間の「支配契約文書」、君主が発布した「基本法」および「同職組合条令」である。これまでの先行研究と史料分析を通して得られた主要知見は、以下の通りである。 1) 中世後期における都市財政の悪化の原因は、諸戦争への参加と敗戦、都市経済の衰退、無計画な都市借款の継続、市内紛争の継続などに求められる。 2) 初期近世段階の領邦都市の統治体制には、固有の身分制国家段階の主要な指標の多くはもはや見られない。 3) だが、領邦都市の都市参事会は、「上からの寡頭政化を」を進められ君主支配機関の性格を強めたにも拘らず、実質的な「互選制」や独自の統治慣習の形成などにより「中間権力」として組織化されていった。 以上の成果は、平成11年度刊行の学術誌に「ドイツ領邦絶対主義形成過程における中間的諸権力」(仮題)(上)として発表する予定である。 なお本年度は、絶対主義における中間権力の位置づけ全般をも考察し、「近世ドイツ領邦絶対主義をめぐる諸問題」(『法制史研究』48)の一部をなすものとして発表した。主張点は、次の通りである。 1) 中間権力は、もはや命令権者ではなく執行機関としての性格を強くしている。 2) 君主発布の条令により、中間権力は君主の政治体制内に位置づけられている。.
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