1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610388
|
Research Institution | Osaka Shoin Women's Junior College |
Principal Investigator |
川瀬 豊子 樟蔭女子短期大学, 日本文化史科, 教授 (10195092)
|
Keywords | 古代オリエント / ハカーマニシュ朝(アカイメネス朝) / セクレタリアート / 書記 / 文書行政 / 公用語 / 世界帝国 |
Research Abstract |
前1000年紀後半オリエント世界を史上初めて統一するのに成功したハカーマニシュ朝(アカイメネス朝)ペルシア帝国は、第3代ダーラーヤワウ1世(ダレイオス1世)治世下に、税制改革をともなうサトラプ制を帝国全土に適用・制度化することによって、その後約200年におよぶ統治の基盤を確立した。この画期的なシステムを実効力のあるものとしたのは、中央政府と地方を結ぶ緊密なる交通・通信網の存在であり、その根幹を支えたのは文書主義に基づく国家管理体制であったと推定される。 文書主義に基づく管理体制は、前3000年紀以来のオリエントの伝統であったが、オリエントのあらたな覇者となったハカーマニシュ朝においても、国家あるいは王室経済の管理諸部門に導入された。ダーラヤワウ1世治世下に考案された古代ペルシア語楔形文字と伝統的なアッカド語・エラム語(ともに楔形文字)併用の王碑文、ペルセポリス出土の王室経済管理文書(「城砦文書」「宝蔵文書」)、帝国公用語として採用されたアラム語による数多くの書簡は、まさにハカーマニシュ朝の諸王/そのブレーンが文書主義の伝統とその価値を正確に認識していたことの証左である。ハカーマニシュ朝期の文書行政に関しては、「城砦文書」およびアラム語書簡集の分析からあらたな知見を得ることができた。特に交通・通信網の管理が、徹底した文書主義に基づくことが確認された。ただし本年度の課題であるペルセポリス王室経済圏における「書記」の職務・養成の実態、王・高官から「書記」への文書作成の指揮系統に関しては、史料および研究史上の制約から、いまだ充分に満足のできる成果を得るには至っていない。しかしながらこの3月イランを訪れ、シーラーズのファールス研究所のProf.J.Sedaghatkishから直接貴重な視点を御教授いただいたので、次年度はあらたな角度からアプローチを試み分析を徹底する予定である。またハカマーニシュ史研究を主導する立場にあるProf.Vallat.Prof.Brianl、Prof.Stolperなどとこれまで以上に情報交換を密にし、研究の充実に努めたい。
|
Research Products
(1 results)