1998 Fiscal Year Annual Research Report
鋳型等の鋳造関係遺物による弥生時代青銅器の編年・系譜・技術に関する研究
Project/Area Number |
10610392
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
後藤 直 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (20292732)
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Keywords | 弥生時代 / 青銅器鋳造 / 鋳型 |
Research Abstract |
本年度はとくに福岡県春日市出土鋳型を集中的に調査し、詳細な観察と実測図・拓本作製、写真撮影を実施し、データの悉皆的収集に努めた。ただし資料が多い(200点以上)うえに多数の細片を含むため全部を見切れていない。鋳型に彫込まれた種類は剣、矛、戈、鏃、小銅鐸、小型倣製鏡、製品の発見例のない異形品であるが、小破片のため種別判定が困難だったものについても多少判定でき、その中には〓とみられるものがあった。このほか福岡市、熊本市、佐賀県などでも発見されたばかりの資料を含め十数点の鋳型を調査した。 これらによって、鋳型複数面を使用する例の多いこと、使用済み鋳型に切断のための擦切状の痕跡や意味不明の加工痕などが認められること、大型品製作後の小型品用鋳型への転用頻度の高さ、銅戈鋳型の転用例の少ないことなどを確認した。鋳型の法量とくに厚さと幅については、製品の種類による規則性が認められそうである。一連の調査で、転用例の多いことが明らかになり、また石型と土型の組合わせもありうるとの想定を再検討すべき事例もみつかり、九州における石製鋳型伝統の強さと保守性を改めて認識した。 土製鋳型については、奈良県唐古・鍵遺跡出土の鋳型枠を観察するとともに調査担当者の詳しい説明を受け、類のない技法であることを確認し、九州の石製鋳型の伝統と全く異なるこの技法の由来が、弥生社会の動向研究に深くかかわることが予測できた。 なお鋳造工程と青銅器製作工房の具体的研究は、矛や鐸の中型、坩堝・取瓶・送風管など鋳造作業用具の調査が未完で、また鋳型出土遺跡報告書に未刊行のものが多いために、次年度にもちこした。
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