1998 Fiscal Year Annual Research Report
ロシア的立憲主義の確立過程におけるロシア憲法裁判所の役割と意義
Project/Area Number |
10620006
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
杉浦 一孝 名古屋大学, 法学部, 教授 (40154463)
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Keywords | ロシア / 立憲主義 / 憲法裁判所 / 人権 |
Research Abstract |
1998年度は、第一に、いわゆる人権に関するロシア憲法裁判所の判決を分析した。とくに、1992年から活動し始め、1993年9月の大統領陣営によるクーデターで事実上廃止された旧ロシア憲法裁判所のいわゆる人権(そのほとんどが社会権に属するもの)に関する判決をすべて分析した。この作業は、旧憲法裁判所に対する消極的ないし否定的な評価がロシア内外で支配的な状況のなかで、その評価の一面性を批判するためには不可欠なものである。分析の結果、明らかとなったことは、限定された分野であるにしても、旧憲法裁判所が人権保障の領域で重要な役割を果たしていた点である。次に、1995年2月から活動を開始した新ロシア憲法裁判所が1998年に言い渡した判決、例えば、税と私的所有との関連に関する一連の判決、職業選択の自由と団体(この場合は公証人会)への強制加入との関連に関する判決、刑事手続上の被疑者・被告人の権利保障に関する判決を分析し、その結果、新憲法裁判所も人権を保障するうえで少なからぬ貢献をしていることが明らかとなった。 第二の作業は、ロシア憲法裁判所法の改正に関する諸文献の分析である。現行の憲法裁判所法が制定されたのは、1994年7月である。それから4年以上が経過し、当然、規定のなかにはロシアの現在の法状況に適応できなくなったものが存在する。その典型的な例は、ロシアが、ヨーロッパ人権条約に加入したことにより、ロシアの憲法裁判所の最終的な判断を覆す法的効果をヨーロッパ人権裁判所がもつことを認めたことである。これは、ロシア憲法裁判所の判決が最終であり、これに対して上訴することはできないとする憲法裁判所法の規定と抵触する。憲法裁判所を取り巻く状況は大きく変わりつつあり、それにともなって憲法裁判所法も当然必要な改正を受けることになる。来年度も、この追跡作業は引き続き行っていく予定である。
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Research Products
(2 results)