1998 Fiscal Year Annual Research Report
「公共事業社会」と中小建設業の経営・労働の内容に関する実証的研究
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10630028
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
椎名 恒 北海道大学, 教育学部, 助教授 (50281762)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 真 岩手大学, 教育学部, 助教授 (00192097)
木村 保茂 北海道大学, 教育学部, 教授 (40003959)
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Keywords | 公共事業 / 建設業 / 中小企業 / 建設労働 / 談合 / 下請 / 季節労働 / 失業 |
Research Abstract |
「地域公共事業社会」を構成する諸主体やそれに関わる存在として、軽視できない若干の主体とその動向が浮かび上がりつつある。そのひとつの公共工事発注主体は、全体として市町村レベルでは、国や都道府県レベルの改革の動きに比して鈍いが、地域による相違も生まれつつある。それは予定価格の事後公表の実施地域と未実施地域などに示された。他方で工事施工主体である地域における建設業関係諸団体の分厚い存在と機能が、川崎市など一部で揺らぎを見せていることが示された。分厚い存在という点では、北海道旭川市の場合、建設業団体27、建設資機材関係団体13、設計・コンサル関係4、その他3、合計で47団体を数える。このうち加入業者数が判明した27団体だけで1587業者が組織されている。重複もあろうが地方都市における「公共事業社会」を担ってきた組織された影響力の行方に絡み無視できない。 また地域における中小建設業の経営と労働それ自体に目を向けると、受注減少による経営危機への新たな模索が広がるとともに、現場労働者集団の失業問題が深刻な陰を落としている。同時に北海道では、冬季雇用援護制度に関連した中小建設業におけるワークシェアリングの存在とその維持が容易でない状況も確認された。そうしたなかで季節労働者の冬場の失業に加わる夏場の失業が広がる過程で、失業保障から漏出する一部が厳冬下の路上生活者化し、道内の旭川、札幌、函館などで目立つようになっている。失業保障からの漏出が、「地域公共事業社会」を含めた地域社会からの漏出(疎外)につながる側面を示すものとしても注目される。
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