2000 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における在来産業の発展構造に関する基礎的研究-醤油醸造業の事例に即して-
Project/Area Number |
10630077
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
花井 俊介 早稲田大学, 商学部, 助教授 (70212149)
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Keywords | 醤油醸造業 / 在来産業 / 香川県 / 井筒醤油 / 丸金醤油 / キノエネ醤油 / 工業化 / 投資活動 |
Research Abstract |
本研究は、醤油醸造業を事例として、近代日本における在来諸産業の展開論理を明らかにすることを目指している。本年度は研究の最終年度に当たるので、各地の個別経営資料の補充的収集を行うとともに、まとめに向けて経営データの解析を進めた。 資料収集については、整理中のため十分に閲覧できなかった香川県立文書館蔵・井筒醤油(中規模醸造家、香川県、佐野家)資料の調査を行った。今回の調査ではこれまで見ることができなかった資料群の一部にもアクセスできたが、その結果、同資料群は量的に豊富なだけでなく、質的にも非常に良質であることが判明した。例えば、明治中期以降、毎年の決算書が欠落無く戦時期まで残されており、決算書には醤油経営のみならず、佐野家の地主経営や有価証券投資など家産に関する情報も網羅されている。同家資産全体の中で醤油経営がどう位置づけられていたか、また醤油経営での蓄積がどのようなに家産増殖に回っていたのかが追跡可能であり、同資料だけでも非常に貴重といえる。本研究の目的の一つである、在来的蓄積と工業化とのポジティブな連関を考察する場合、地方の中小醸造家の投資活動が重要となる。同資料はこの点の解明に大きく資するであろう。現在なお整理中のため公開にはまだ時間がかかるとみられるが、継続して調査を実施したい。その他、本年度はこれまで資料収集が進んでいない九州地方で資料発掘を試みたが、まとまった資料群は発見できなかった。他方、資料収集が進んでいる丸金醤油(香川県)とキノエネ醤油(千葉)については共同研究者と分析を進めた。丸金については、小豆島醤油の関西市場進出、新興産地ブランドの確立に対し、小豆島醤油醸造業組合が果たした機能の解明に焦点を当て、キノエネに関しては東京市場での関東三印(キッコーマン・ヤマサ・ヒゲタ)による寡占化が同社の経営に及ぼした影響に着目して現在検討を進めている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 花井俊介: "転換期の在来産業経営-大正後期・昭和戦前期における小規模醤油醸造家の事例に即して-"『経済学研究』九州大学経済学会. 第65巻・第4号. 43-70 (1998)
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[Publications] 林玲子,天野雅敏 編: "東と西の醤油史"吉川弘文館. 286 (1999)