2000 Fiscal Year Annual Research Report
ニュートリノビームを用いたニュートリノー原子核反応の研究
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10640252
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 好孝 東京大学, 宇宙線研究所, 助教授 (50272521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中畑 雅之 東京大学, 宇宙線研究所, 助教授 (70192672)
梶田 隆章 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (40185773)
鈴木 洋一郎 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (70144425)
竹内 康雄 東京大学, 宇宙線研究所, 助手 (60272522)
福田 善之 東京大学, 宇宙線研究所, 助手 (40272520)
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Keywords | ニュートリノ振動 / 水チェレンコフ装置 / 素粒子 / ニュートリノ質量 / 弱い相互作用 / 原子核 / 中性カレント反応 / スーパーカミオカンデ |
Research Abstract |
本年度では、1kt水チェレンコフ装置で検出されたニュートリノー水反応について詳細な検討が始まった。特に中性カレント反応断面積を調べるために重要な、中性π中間子生成イベントについて詳細な研究が行われ、現有のモンテカルロと非常によい一致を示すことがわかった。 中性π中間子は2電子リング事象として検出され、その普遍質量、方向、運動量などが再構成された。データとして使われたのは2000年1月から6月までで、その間の月ごとのイベント数やリング数判定や粒子識別の尤度分布などの経時変化がチェックされ、非常に安定であることが確認された。得られた中性π中間子の運動学的分布、運動量、ビーム方向に対する放出角、放出の前後非対称性と運動量との相関など、モンテカルロと非常によい一致を示している。このことは我々のニュートリノ反応および生成後のπ中間子の原子核中での2次反応のシミュレーションが現実をよく再現している証拠といえる。中性π粒子の生成率については、1リングfully contained μイベントとの生成比、R(π0/μ)として求められた。データは0.241±0.007(統計誤差)±0.024(系統誤差)、モンテカルロからの予想される値は0.244±0.004±0.006であり、データ/モンテカルロの比は0.99±0.03±0.1となり非常によい一致を示している。また今回約10%の精度R(π0/μ)を求めることができたが、これは従来考えられてきた中性カレント反応の断面積の不定性30%に対して3倍もよい測定となっている。R(π0/μ)から中性カレントπ生成反応断面積を導くためには、核内効果による影響を考慮する必要があり、今後の課題となっている。またこの結果はスーパーカミオカンデにおける大気ニュートリノでの中性π中間子生成イベントに応用することで、振動モードの決定することができる。現状の10%のエラーは非常に期待がもてる数字であるが、1kt検出器とスーパーカミオカンデとの検出器、およびニュートリノエネルギー、成分比の違いに起因する系統誤差を検討する課題が残っている。これらの結果は夏頃をめどに論文にまとめられる予定である。
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