サケ科魚類における半隔離個体群の動態および個体群間の相互作用

1999 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 10640606
• Research Institution: Hokkaido University
• Principal Investigator: 前川 光司 北海道大学, 農学部・附属演習林, 教授 (80002301)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 中野 繁 京都大学, 生態学研究センター, 助教授 (50217791)
• Keywords: オショロコマ / メタ個体群 / マイクロサテライトDNA / 遺伝的距離 / 母川回帰

Research Abstract

メタ個体群において局所集団間の交流は個体群ごとの動態や絶滅リスクに大きく影響する。したがって、交流パタンを正確に把握することはその動態の要因や適切な保全・管理につながる。一般に、生物の移動能力には限界があり、距離的に近い集団ほど頻繁に交流が行なわれいることが予測される。逆に、集団間の交流には距離による隔離(isolation-by-distance)が働いていると予想される。本年度は北海道空知川上流の多くの支流に生息する河川生オショロコマの遺伝的・生態学的調査を行った。遺伝的研究にはマイクロサテライトを用いて、微地理的スケールにおけるオショロコマの各支流個体群間の遺伝的交流を推測した。平行して、近接した4支流でのセンサス・標識再捕獲・ヤナの設置などを行い実際の個体の移動も調べた。その結果、遺伝的距離(Fst)と地理的距離には正の相関(Mantel test : p=0.002)が認められた。そこで、1世代あたりの有効移動個体数(Nm)に対して地理的距離を回帰分析したところ、isolation-by-distanceが示唆された。また野外データによって、移動に影響する障害物がある河川集団では他集団と交流が制限されていることが示唆された。DNA解析の結果からも、この集団はセンサスを行った他の近接した3河川から遺伝的に分化していることが明らかとなった。(Fst=0.07-0.15、すべてp<0.05)。野外データからも移動が制限されていることが支持された。実際の野外調査にから、滝によって交流が制限されている支流ではメスの成熟体サイズが有意に小さいなど、近接集団と集団構造を異にする点が多く認められ局所的に適応している可能性が示唆された。現在、データの信頼性を高めるために。遺伝的・生態的調査を継続している。

Research Products

• [Publications] Katano, O, K.Maekawa and K.Iguchi: "An experimental study of interaction and feeding behaviour of ayu, Plecoglossus altivelis and Japanese dace, Tribolodon hakonensis"Fisheries Science. 65(1). 42-47 (1999)
• [Publications] Koseki, Y., K.Takata and K.Maekawa: "The role of the male anal fin in the fertilisation success in medaka, Orysias lapites"Fisheries Science. (in press). (2000)
• [Publications] Tamate, T. and K.Maekawa: "Interpopulation variation in reproductive traits of female masu salmon, Oncorhynchus masou"Oikos. (in press). (2000)
• [Publications] 前川光司: "渓流生態砂防学、渓流魚の生態と砂防工事の影響、太田・高橋編"東京大学出版会. 246 (1999)
• [Publications] 前川光司・中野繁・井口恵一朗: "環境変動と生物群集、温暖化による淡水魚類の分布変化 河野昭一・井村治編"海ゆう社. 280 (1999)