EPAおよびDHAを含む構造脂質の栄養生理作用の解明

1998 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 10660126
• Research Institution: Kyushu University
• Principal Investigator: 池田 郁男 九州大学, 農学部, 助教授 (40136544)
• Keywords: エイコサペンタエン酸 / ドコサヘキサエン酸 / 構造脂質 / トリアシルグリセロール / 脂肪酸合成酵素 / トロンボキサン / プロスタサイクリン / アラキドン酸

Research Abstract

エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)がトリアシルグリセロールのsn-2位に多い油(2-TG)とsn-1および3位に多い油(1,3-TG)を含む油脂をラットに与え、脂質代謝に及ぼす影響を調べた。なお、食餌油中のEPA、DHA含量は同じ量になるように調製した。リノール酸の多い油(Control)に比較して、1,3-TGでは、2-TGよりも血漿および肝臓トリアシルグリセロール濃度を低下させた。血小板凝集作用のある血小板トロンボキサンA2産生能は1,3-TG群でもっとも低かった。また、血小板凝集の指標となる大動脈プロスタサイクリン/血小板トロンボキサンA2産生比は1,3-TG群でもっとも高かった。肝臓レシチンおよびセファリン中のアラキドン酸含量は1,3-TG群で、2-TG群よりも低下した。また、血漿レシチンでも同様であった。その他の種々の臓器では有意な低下はみられなかったものの、低下傾向にあった。これらのことから、EPAやDHAはトリアシルグリセロールの1,3位にある方が、2位にあるよりも有効に作用することが示された。また、同様の飼育を行い、肝臓での脂肪酸合成系酵素、トリアシルグリセロール合成系酵素および肝臓トリアシルグリセロールリパーゼさらには、脂肪組織でのリポ蛋白質リパーゼの活性を測定したところ、1,3-TG群で脂肪酸合成系の酵素であるfatty acid synthaseおよびmalic enzymeの活性が低かった。このことから、1,3-TG摂食による肝臓および血漿トリアシルグリセロール濃度低下は、肝臓での脂肪酸合成の抑制に起因すると考えられた。