1998 Fiscal Year Annual Research Report
オルイガネラDNA解析によるブナ集団の系統地理学的研究
Project/Area Number |
10660145
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
戸丸 信弘 名古屋大学, 農学部, 助教授 (50241774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津村 義彦 森林総合研究所, 生物機能開発部, 主任研究官
山本 進一 名古屋大学, 農学部, 教授 (60191409)
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Keywords | ブナ科 / Fagus crenata / ミトコンドリアDNA / 遺伝的構造 / 系統地理 / 遺伝的多様性 / 制限酵素断片長多型 / 葉緑体DNA |
Research Abstract |
本研究では、全分布域のブナ集団を対象にオルガネラ(ミトコンドリアと葉緑体)のハブロタイプを調査して集団の系統関係を表す系統地理学的分布図を作成し、現在のブナ集団の系統と地理的分布との関連を明らかにすることを目的としている。平成10度は、ブナの地理的分布の把握、研究対象の集団の選定とサンプル採取、集団サンプルのミトコンドリアDNA(mtDNA)の分析、葉緑体DNAの多型的領域の探索を行った。特に、集団サンプルのmtDNA分析では以下の結果が得られた。 全分布域から抽出された17集団によりブナのmtDNA変異を調べた。全DNAを2種類の制限酵素(BglIIとEcoRI)の制限酵素で切断して、coxI、coxIIIおよびatpAの遺伝子配列を含むプローブでサザンハイブリダイゼーションを行った。3種類の遺伝子領域周辺に明らかな制限酵素断片長多型が存在し、この多型をもとに8種類のハブロタイプに分類した。集団内のハブ口タイプ多様度は非常に低くかったが、集団分化は非常に高かった。このmtDNA変異はアロザイム変異と著しく対照的であった.母性遺伝するmtDNAの遺伝子流動は種子散布に限られるのに対して、核遺伝子では種子・花粉の両方の散布で起こる。したがって、このmtDNAとアロザイムの差異は主として、花粉による移住率が種子によるものに比べて非常に高いことの現れであると考えられた。また、mtDNA変異は強い地理的な遺伝構造を示した。この地理的構造は最終氷期の分布とそれ以降の分布変遷を反映したものであり、系統地理学的構造と考えられた。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Tomaru,N.,Takahashi,M.,Tsumura Y.,Takahashi,M.and Ohba,K.: "Intraspecific variation and phylogeographic patterns of Fagus crenate (Fagaceae) mitochondrial DNA." American Journal of Botany. 85・5. 629-636 (1998)