1998 Fiscal Year Annual Research Report
林地と田畑地域を総合した防災空間である里山砂防に関する研究
Project/Area Number |
10660149
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
日浦 啓全 高知大学, 農学部, 教授 (30046495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平松 晋也 高知大学, 農学部, 助教授 (70294824)
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Keywords | 農業用頭首工 / 渓床土砂の固定化 / 生産土砂の定量化 / 移動土砂 |
Research Abstract |
この研究では林地と田畑地域により形成される総合的空間を防災空間として位置づけている.この空間に発生する可能性のある土砂災害をまず,林地で受けとめ,さらに第2段階的に田畑で受けとめることにより,直下に隣接している人家を被災から守ることになる.従来よりの行政組織の縦割り的発想から脱して,横の連絡を密にとることで人命財産を効率的かつ効果的に守ることができるようになる.このような体制の作りのために,まず,それぞれのもつ機能の定量化が必要となってくる. 今年度は,不安定土砂の堆積場である山地域の渓流において,田圃への取水のために設置されてきている,農業用頭首工に焦点をあてた.本来もつ取水のための機能の他に渓流域における土砂災害の発生とその防止効果という観点から見ると,これらの構造物は砂防でいう「床固工」の機能を持つと考えられる.近年の,流通の変革や農村地域の過疎化およびそれに伴う農業の後継者不足の影響を受け,放棄された水田や畑地が多く見られるようになってきている.この流れに呼応して取水のための頭首工も放棄され,荒廃が進んでいる,対象とした流域は四万十川の最上流域に位置する,四万川流域である.この流域は高知県高岡郡梼原町にあり,流域面積は81km^2延長;22.7kmの河川である.流域の西側は愛媛県と接している.中流部の六丁地点から水源にかけて,石積みの棚田が美しい景観を表出している.さらにこれらの棚田に取水する頭首工が昭和38年頃から数多く建築されている.現在稼働中のものも含めてこの地域には約40基あるこれらを対象として,その規模,形式,稼働中か否か,砂防構造物としての機能を有しているか等についての実態調査を実施した.その結果半分以上の頭首工が放棄されており荒廃が進んでいることが分かった.しかしながら,渓流内に一定間隔に設置されているため,さらに上流域に設置されている砂防施設や治山施設の存在を総合して考えると頭首工が渓流の不安定土砂の固定に多大の貢献をしていることが認められた.来年度は本年度に定性的に認められたことを定量化し,同じく森林地域における生産土砂の扞止量の定量化をも試み,林地と田畑地域による生産土砂の定量化を土地利用を媒介変数として評価していく所存である.
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