1999 Fiscal Year Annual Research Report
RNA合成も可能なDNAポリメラーゼ変異体の分離とその生化学的解析
Project/Area Number |
10670117
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鈴木 元 名古屋大学, 医学部, 講師 (80236017)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 松年 名古屋大学, 医学部, 教授 (70090420)
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Keywords | DNAポリメラーゼ / DNA複製 / 転写 / 複製忠実度 / DNA合成 / 塩基置換 / フレームシフト / ゲノムインスタビリティー |
Research Abstract |
DNAポリメラーゼはデオキシリボヌクレオチドを基質としてDNAを合成し、世代を越えた遺伝情報の伝搬に機能している(DNA複製・修復)。一方RNAポリメラーゼはリボヌクレオチドを基質としてRNAを合成し、細胞内での遺伝子発現の手段となる(転写)。この二つの現象はセントラルドグマ上独立しているが、役者である両基質と両ポリメラーゼは酷似している。細胞がこの化学的に似通った、しかし生物学的に厳然と区別された作業を執行するためには、確実且つ効率的な両機構の識別機能の保証が前提となる。本研究ではDNAポリメラーゼを用いてこの識別機構を明らかにするため、Taqポリメラーゼ遺伝子を用いてリボヌクレオチドをデオキシリボヌクレオチドと同様に取り込む新規の変異体を同定、解析した。このうち一つ(A661E)は正しい塩基を野生型と全く同じ効率で取り込むにも関わらず、リボヌクレオチドを野生型の15倍の効率で取り込むことができた。さらに、この変異体は誤ったデオキシリボヌクレオチドについても全て10倍程度野生型より効率よく取り込み、フレームシフト型の複製エラー発生頻度も10倍程度高かった。A661E変異体を3次元立体モデルで解析してみると、置換したグルタミン酸が間接的にプライマーDNA3'末端と相互作用していると推測された。この状態はDNAポリメラーゼがヌクレオチドを取り込む瞬間に野生型より安定な酵素・基質・DNA複合体を作るのに寄与すると考えられ、その結果リボヌクレオチドの取り込み向上をはじめとする誤ったDNA合成をひきおこすと結論した。今回の実験系によってDNA複製の効率と複製忠実度を分離することが可能になった。
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