1999 Fiscal Year Annual Research Report
小児G型肝炎の分子生物学的研究:ウイルスゲノムと宿主免疫能の解析
Project/Area Number |
10670704
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
須磨崎 亮 筑波大学, 臨床医学系, 助教授 (40163050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 陽 筑波大学, 臨床医学系, 教授 (00159146)
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Keywords | 輸血後肝炎 / 血友病 / TTウィルス / 血液凝固因子製剤 / 再感染 / 遺伝子型 / 分子疫学 / 感染経路 |
Research Abstract |
最近、G型肝炎ウイルスと同様血液製剤によって伝播する可能性があるTTウイルス(以下TTVと記す)の問題が浮上してきた。昨年度の本研究により、血友病患者でTTV感染率が高いことが明らかになった(Lancet352:1308-09)。この問題は社会的に緊急課題であり、本年度は血友病患者のTTV感染病態について検討した。 血友病群の20例が1991年の時点でTTV-DNA陽性だった。このうち18例は1996年においても陽性であり、2例のみが陰性化して血中からTTV-DNAが消失していた。一方、対照群17例のうち持続感染してしていたものは3例のみで、14例は経過中にTTV-DNAが陰性化した。以上の結果から、血友病患者はTTVが長期間、持続的に検出されやすいことが判明した。次に、持続的にTTV-DNAが検出された8症例について、経時的にTTV遺伝子型の推移を検討した。血友病群では各検体から複数の遺伝子型が検出され、またその遺伝子型は年度によって大きく変化していた。例えばある患者では、1991年にはG2a,G2b,G4の3種の遺伝子型が検出されたが、93年にはG2aとG4は消失し、G2bのみが残存し、更に新たなG1aが感染していた。96年にはG2bも消失し、G1b,G6の2種類のウイルスが新たに感染していた。この患者では1991年からTTV-DNAは持続的に陽性であったが、そのウイルスの遺伝子型は91年と96年では全く異なっていることから、単なる持続感染というより、新たなTTV株が頻回に再感染しているものと推測された。5年間にこのような新たなウイルス株の出現は検索した血友病群8例中7例で起こっていた。また血友病患者から検出されるTTVの遺伝子型には、日本人には少ないとされるG1,G2以外のウイルス株が多く認められた。これらの患者は全て、外国から輸入された血液凝固因子製剤を使用された既往があることから、少なくともTTV感染の一部はこれらの凝固因子性剤に由来する可能性が推測された。TTVはエンベロープを有さず、加熱処理にも抵抗性であることから、今後、さらに凝固因子性剤の感染性についての検討が必要である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Sumazaki et al: "Transfusion transmitted virus"Lancet. 352. 1308-1309 (1998)
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[Publications] Yamada-Osaki et al: "Persistence and Clinical outcome of HGV infection"Blood. 93・(2). 721-727 (1999)