Research Abstract |
MRIをはじめとする画像診断機器の著しい進歩は,診断能の向上をもたらし,患者の幸福に大きく貢献しているが,医療費高騰の原因の一つであるとされている.しかしながら,これら新しい画像診断機器を利用する事によって得られた恩恵については,医療費に関する議論の中に反映されていない.今回は,子宮頚癌,卵巣癌を対象に,判断樹を用いた手法によって,MRI及び造影検査について医療経済学的検証を行った.対象は子宮頚癌42例,卵巣癌28例である.それぞれ対象を1期から4期まで分類し,超音波だけ,CTを加えた場合,造影CTを加えた場合,MRIを加えた場合,造影MRIを加えた場合,の正診率を得た.次に,各々の正診率に基づいて,初診後3年間にかかる総費用について算出した.診断樹に,各正診率,転帰,費用を入力し,独自に開発したソフトウエアを用いて,MRIと造影MRIの費用対効果について算出した.その結果,子宮頚癌の場合,MRIを用いることによって,総費用が患者一人当たり,133,600円節減できた.一方造影MRIの追加による節減は109,600円であった.子宮頚癌の場合,MRIを行うことによって,正診率が向上し,治療にかかる費用が減少するため,総医療費を節減する事ができることが分かった.卵巣癌については,MRIによる節減は-8600円で,節減効果はなかったが,造影MRIによる節減は10,300円であった.卵巣癌の場合,造影によって小病巣が検出できるため正診率が上昇し,総医療費を節減できたものと考えられる. 今回は限られた疾患についてだけ検討したが,次年度は対象疾患を広げ,Quality of Lifeを加味した費用効用分析を行い,より精度の高い普遍的な医療経済学的分析を行う予定にしている.
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