1998 Fiscal Year Annual Research Report
アデノウィルス・ベクターを用いた断裂靱帯修復に関する研究
Project/Area Number |
10671347
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小島 一則 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (70292927)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坪井 寿和 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (80302694)
田中 栄 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (50282661)
福井 尚志 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (10251258)
中村 耕三 東京大学, 医学部・附属病院, 教授 (60126133)
|
Keywords | アデノウィルスベクター / 断裂靱帯修復 |
Research Abstract |
平成10年度にははじめに基礎的な研究としてアデノウィルス・ベクターが治癒過程にある靭帯の修復組織にどの程度の効率で導入されるかを検討した。実験動物として家兎を用い、損傷靭帯に関する治癒遅延のモデルとしてすでに確立されているChimichらのモデル(J Orthop Res,1991)を用い、靭帯実質中央に4mmの欠損部を作成し、ここに種々の方法でアデノウイルスを投与した。LacZをレポーター遺伝子として導入し、この導入効率を調べたところ、市販されているフィブリン製剤にベクターを混合して投与した場合に形成された修復組織に損傷後2週まではレポーター遺伝子の十分な発現があることが確認された。 こののちにベクターおよび担体であるフィブリン製剤の投与が靭帯修復過程におよぼす影響を検討した。担体およびベクターのいずれも投与しない対照群、担体のみを投与した群、担体およびベクターをともに投与した群の3群について損傷後6週までの靭帯修復組織の形成を肉眼所見、組織学的所見、総コラーゲン量とI型およびIII型コラーゲンの比率に関する生化学的検討、引っ張り試験による生体力学的研究により評価した。この結果、担体の投与および担体とベクターの投与はいずれも靭帯の修復過程に有意の影響を及ぼさないと考えられることが分かった。 従来の報告を再度詳細に検討したところ、現在までの時点では靭帯の修復過程が外因性の成長因子の投与により長期にわたって明確に改善されることは期待が困難であることがわかった。一方、皮膚などの組織修復に関して有利な作用があるとの報告が多いヒアルロン酸については最近この合成酵素をコードする遺伝子がクローニングされており、ヒアルロン酸の合成はこの酵素単独の作用によって可能であるとも報告されている。靭帯に関してもヒアルロン酸がその修復に有利に作用するという報告が散見される。このことが我々は当初予定していた成長因子の遺伝子導入に先立って、ヒアルロン酸合成酵素I型の遺伝子を導入し、これによる靭帯修復過程の変化を検討することとし、現在この遺伝子の導入によって実際に修復過程でヒアルロン酸が合成されているかを確認する作業に入っている。
|