1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10680107
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
長津 美代子 群馬大学, 教育学部, 教授 (20192239)
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Keywords | 家族 / 個別化 / 凝集性 / 空間の個別所有 / 情報機器の個別所有 / 役割アイデンティティ / 親子関係の希薄化 |
Research Abstract |
近年、家族は機能不全に陥っているといわれる。このことは、家族が、「個別化つまり分離を志向する力」と「統合化つまり凝集を志向する力」のバランスを保持できなくなっていることの反映でもある。この二つの力が家族のなかで現実にどのように働いているのかを明らかにすることが研究の目的である。 今年度は、先行研究に依拠しながら概念の整理を行うとともに、以下の諸点を中学生とその母親を対象にした予備調査(220組)でとらえた。1.これまで家族統合の中心的な役割を果たしてきた妻・母親の意識は家族に向かっているのか個人を志向しているのか。2.子どもの空間と情報機器(テレビや電話など)の個別所有およびその活用状況は親子関係の希薄化(家族の分離)と関連があるのか否か。 注目すべき知見は次の通りである。1.役割アイデンティティ(存在意義を見出している役割)は「家庭役割型」が約半数で、家族を志向している妻・母が多いが、37%は「職業役割型」と「その他の型」で個人に志向する意識を持っている。特に、常勤の妻・母は個人志向の意識が強い。2.情報機器の個別所有の個数が多い、個室でのテレビゲーム・電話の使用時間が長い、個別空間で過ごす時間が多いことは、親子関係を希薄化することになっている。3.しかし、妻・母の個人志向の意識が強くても、子どもの空間や情報機器の個別所有・活用状況、親に対する意識は、家族志向の場合と差はなく親子関係の希薄化には繋がっていない。 次年度は、夫、妻、子どもの個別化志向性や実態としての個別化、家族アイデンティティを確認できる行為などについて捉え、これらの諸状況が夫婦や親子の相互作用にどのような影饗を与えているのかについて総合的に明らかにする。
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