1998 Fiscal Year Annual Research Report
国際裁判管轄及び外国判決承認執行に関する条約構想の研究
Project/Area Number |
10834002
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
佐野 寛 岡山大学, 法学部, 教授 (40135281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 俊行 九州大学, 法学部, 教授 (80186626)
道垣内 正人 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (70114577)
野村 美明 大阪大学, 大学院・国際公共政策研究科, 教授 (20144420)
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Keywords | 国際裁判管轄 / 外国判決の承認・執行 / 国際民事訴訟 / 国際訴訟競合 / ブラッセル条約 / ハーグ国際私法会議 / フォーラム・ノン・コンヴィニエンス |
Research Abstract |
1. 本年度は、諸外国の法制、特に、ヨーロッパで実際に機能しているブッラセル・ルガーノ条約に関する裁判例と、特異な法制を有しかつ影響力の大きなアメリカ合衆国の考え方を整理・検討するという基礎作業を進め、かつ、オランダのハーグ国際私法会議における「民事及び商事に関する裁判管轄及び判決の承認・執行に関する条約」の作成過程に合わせて、個々の問題点についての日本の対応について具体的な考え方を整理・検討した。その重要ポイントは、(1)契約事件の特別管轄原因として、義務履行地を認めることが妥当であるものの、金銭支払義務の履行地は除くことが適当であること、(2)不法行為事件の特別管轄原因として、原因行為地に加え、結果発生地をも加えるべきものの、被告となる加害者の合理的予測の範囲内にない結果発生地は除くのが適当であること、(3)アメリカにおいて発展したフォーラム・ノン・コンヴィニエンスの法理を参考とし、これに類似した管轄権不行使の裁量(訴訟手続の中止)を裁判官に認めることはわが国の制度にとっても受け容れ可能であるが、その基準はできるだけ明確なものとする必要があること、(4)訴訟競合の規律にあたっては、原則として外国で係属中の訴訟において将来下される判決の日本での承認・執行可能性を基準とすべきであること、(5)懲罰的損害賠償の支払いを命ずる外国判決は、それを承認・執行の対象外とするか、公序違反とするかについてはなお検討を要するものの、結論においては承認・執行を拒否するものとすべきであること、などである。 2. 研究計画の最終年度となる1999年度には、アメリカでのシンポジウムが予定通り開催されるようであればそれに参加することになるため、それに合わせて途中経過をまとめ、その上で、本研究プロジェクトとしての条約構想の指針をとりまとめる所存である。
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[Publications] 道垣内 正人: "「ヘーグ国際私法会議の『民事及び商事に関する国際裁判管轄及び外国判決承認執行に関する特別委員会』第3回会合の概要」" 国際商事法務. 26巻5号. 491-503 (1998)
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[Publications] 野村 美明: "「日本法人がドイツに居住する日本人に対して契約上の金銭債務の履行を求める訴訟につき日本の国際裁判管轄が否定された事例」" 私法判例リマークス. 18号. 160-163 (1999)
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[Publications] 河野 俊行: "International Civil Procedure in Japan." Asian Yearbook of International Law. 1996. 105-134 (1998)
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[Publications] 佐野 寛: "国際取引法〔新版〕" 有斐閣, 343 (1998)