1998 Fiscal Year Annual Research Report
セントロメア機能不全の分子細胞遺伝学的解析,とくに染色体不分離との関連
Project/Area Number |
10877384
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
池内 達郎 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教授 (90041839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 光明 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助手 (60182789)
斎藤 深美子 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助手 (10158917)
梶井 正 北里大学, 医学部, 客員教授
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Keywords | セントロメア / 早期染色分体分離 / 染色体不分離 / 異数性 / Cdバンド / 小児腫瘍 / 抗セントロメア抗体 / 優性遺伝 |
Research Abstract |
1. 分裂期染色体を構成する2個の染色分体およびセントロメアが分裂後期に入る前にすでに解離する現象があり,以前からc-anaphaseまたはpremature centromere divisionなどと呼ばれていた.我々は,全染色体の染色分体解離が高頻度(5%以上)に認められる形質が家系内で優性遺伝し,ホモ接合の個体では多発性奇形(IUGR,小頭,脳奇形など)と小児腫瘍ならびに多彩な染色体異数性のモザイクを伴う2家系を報告した(Kajii et al.,Amer J Med Genet,78:245,1998).ホモ接合の患児では70〜80%もの細胞で全染色体の染色分体が著しく解離する.我々はこの現象をとくにTotal Premature Chromatid Separation(TotalPCS:早期全染色分体分離)と名付けた.この2症例/2家系での知見は,PCS現象と染色体不分離(またはトリソミー)および腫瘍発生との間に有機的な因果関係が存在する可能性を初めて提示したものといえる. 2. Total PCSのさらに詳細な細胞遺伝学的性状を知るために,3家系のへテロ接合保因者7名とホモ接合1症例の末梢血培養リンパ球およびEBウィルス媒介で樹立して得たリンパ芽球細胞株(LCL)を用いて解析し,次のような有意な知見を得た:Total PCSを示す染色分体のセントロメア域はCバンド陽性,セントロメアDNAによるFISHシグナル陽性,抗セントロメア蛋白抗体に対するCENP-A,-Cも陽性,さらに改良銀染法による「活性」動原体領域に検出されるCd(centromere dot)も陽性であった.また,ホモ接合症例由来の長期培養LCLでも高頻度なtotal PCSの性状は安定して維持されていることを確認した. 3. Total PCS保因者で貧精子症の1症例を経験し,培養リンパ球と精子における異数性細胞出現の有無について,染色体(7,8,17,18番)特異的なセントロメアDNAをプローブとしたFISH法により検討した.その結果,total PCSの形質は,ヘテロ接合個体にあっても体細胞分裂と配偶子形成過程において低頻度(健常者の3〜8倍の頻度)ながら異数性細胞の産出をもたらしていることが確認された.
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Kajii T,Kawai T,Takumi T,et al.,& Ikeuchi T: "Mosaic variegated aneuploidy with multiple congenital abnormalities : Homozygosity for total premature chromatid separation trait." Americal Journal of Medical Genetics. 78. 245-249 (1998)