2010 Fiscal Year Annual Research Report
成体動物を用いた多ニューロン画像法で海馬病態システムに迫る
Project/Area Number |
10J05408
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
佐々木 拓哉 埼玉大学, 脳科学融合研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 神経生理学 / イメージング / 海馬 / ニューロン / 活動電位 / アストロサイト / 自発活動 / カルシウム |
Research Abstract |
今年度の申請研究では、海馬回路における、ニューロンとアストロサイト間の相互作用に注目した。軸索周辺に存在するアストロサイトが、活動電位の軸索伝播、およびその下流のシナプス伝達をどのように調節するか検討するため、蛍光ガラス電極を用いた軸索パッチクランプ記録法を開発した。この手法を用いて、これまでに、軸索近傍のアストロサイトの活動が、軸索を伝播する活動電位の幅を増大させ、その下流で生じるシナプス伝達を増強させることを明らかにした。薬理学的検討により、この作用はグルタミン酸受容体の活性化を介することが見出された。このような知見は、アストロサイトが軸索を伝播する活動電位の幅を調節することで、従来考えられていたより広範な影響を及ぼすことが示唆するものである。また、多細胞カルシウムイメージング法を用いることにより、海馬アストロサイトの時空間活動パターンを記録し、詳細に解析した。その結果、アストロサイト間で局所的に同期活動を呈する新たな活動様式を見出した。さらに、この活動には、代謝型グルタミン酸受容体の活性化が必要であることを示した。このようなクラスター状の活動の生理的意義として、周辺のニューロンに脱分極が誘発されることを見出した。最後に、生体海馬において多細胞イメージング法を適用し、アストロサイトが細胞間を大規模に伝播する新たな活動様式を見出した。この特徴的な活動を、アストロサイトglissandiと命名し、同活動がニューロン活動を抑制しうること、脳血管内の血流速度を制御しうることを実験的に証明した。
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Research Products
(12 results)