2001 Fiscal Year Annual Research Report
ポリマーネットワークの分子シンクロナイゼーションを利用した化学エネルギー・情報変換
Project/Area Number |
11167234
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
渡邉 正義 横浜国立大学, 大学院・工学研究院, 教授 (60158657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹岡 敬和 横浜国立大学, 大学院・工学研究院, 助手 (20303084)
今林 慎一郎 横浜国立大学, 大学院・工学研究院, 助教授 (50251757)
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Keywords | 化学情報変換 / 酸化還元酵素 / 電子伝達 / グルコースオキシダーゼ / 電子メディエーター / フェノチアジン / タンパク質ハイブリッド |
Research Abstract |
本年度は化学情報変換に関する成果を述べる。酸化還元酵素を合成化学的に改変し、電極との間の迅速な電子移動反応を酵素活性を損なうことなく可能にすることは、化学情報の選択的な電気信号への変換とその高感度増幅につながる。すなわち特定の化学物質に応答する一種の分子トランジスターを実現することになる。しかし酵素は電極界面において変性しやすく、また電極との間の迅速な電子移動反応は、活性中心が絶縁性のタンパク質に囲まれているため一般に困難である。 本研究では、片末端にレドックス活性基であるフェノチアジン(PT)を、もう一方の末端にカルボキシル基またはアミノ基を定量的に有するポリエチレンオキシド(PEO)の合成法を確立した。この末端官能基の反応性を利用し、GOxの変性を抑制しながら表面のリジン残基(アミノ基)またはグルタミン酸・アスパラギン酸残基(カルボキシル基)に選択的にPT-PEOを修飾した。修飾酵素(GOxハイブリッド)はPT基修飾によりレッドクス活性となり、また電極界面吸着も抑制され、基質であるグルコース存在下ではPT基の酸化電位以上の電位で酵素触媒反応にもとづく定常電流が観測された。これは、修飾されたPT基がPEOスペーサーを介して、GOxの活性中心付近の補酵素(FAD/FADH_2)と電極間の電子シャトルとして働く自己メディエーターとなるためである。 ハイブリッド酵素の触媒電流には興味深い多くの特徴が観測された。第1にPEOスペーサーを介さずに修飾した場合と比較し著しく大きな電流が観測されPEO鎖長が3000のときに極大を示した。第2にPT-PEO修飾数の増大とともに電流値は増大し極大点を与えた。この極大を与える修飾数はPEO鎖長の増大とともに低くなった。第3に残基数も多く補酵素近傍に多くの残基を有するカルボキシル基修飾の方がより効率的な電子移動反応がおき、電子移動速度定数(触媒反応のターンオーバー数)で388s^<-1>と極めて高い増幅率を実現した。これらの結果は修飾したPT-PEOが時間的・空間的にシンクロナイズして効率よく電子伝達を実現したためと考察された。
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[Publications] T.Hirakimoto: "Effects of Addition of a Boroic Acid Ester Monomer to Electrolyte Solutions and Gel Electrolytes on Their Ionic Transport Properties"Electrochim.Acta. 46. 1609-1614 (2001)
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[Publications] M.Watanabe: "Anionic Effect on Ion Transport Properties in Network Polyether Electrolytes"Electrochim.Acta. 46. 1487-1491 (2001)
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[Publications] K.Ban: "Fast Electron Transfer between Glucose Oxidase and Electrodes via Phenothiazine Mediators with Poly(ethylene oxide) Spacers"Electrochem.Commun.. 3. 649-653 (2001)
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[Publications] D.Nakayama: "Electrochemical Study on Swelling Change of Poly(N-isopropyle acrylamide) Gels in Response to Additives by Using Hydrogel-modified Microdisk Electrodes and a Redox Probe"Electrochemistry. 69. 1002-1007 (2001)
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[Publications] H.Tokuda: "Synthesis, Characterization, and Ion-conductive Behavior in an Organic Solvent and in a Polyether for Novel Lithium Salt of a Perfluorinated Polyimide Anion"Macromolecules. 35. 1403-1411 (2002)
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[Publications] S.Aoki: "Electron Transfer Reaction of Glucose Oxidase Hybrids Modified with Phenothiazine via Poly(ethylene oxide) Spacer on Acidic Amino Acid Residues"Chem.Lett.. 2002. 256-257 (2002)
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[Publications] 渡邉 正義(分担執筆): "21世紀のリチウム二次電池技術"シーエムシー. 215 (2002)