2000 Fiscal Year Annual Research Report
紙資料の保存-劣化状態調査法の定式化と大量脱酸処理法の開発
Project/Area Number |
11308005
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
森田 恒之 国立民族学博物館, 民族学研究開発センター, 教授 (10133612)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大谷 肇 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (50176921)
岡山 隆之 東京農工大学, 農学部, 助教授 (70134799)
園田 直子 国立民族学博物館, 博物館民族学研究部, 助教授 (50236155)
大江 礼三郎 東京農工大学, 名誉教授 (10015076)
関 正純 高知県立紙産業技術センター, 技術第2部, 総括主任研究員
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Keywords | 酸性紙の中性化 / 劣化紙の耐折度補強 / セルロース誘導体 / 粘着テープの組成 / Book Keeper法 / Battel法 |
Research Abstract |
酸性化した洋紙の中性化方法ならびに酸性化に伴い低下した耐折強度の補強方法について前年度に引き続き先行例の検討を進めた。製紙材料業界で使用されている各種の耐折度強化剤はいずれも抄紙工程での添加のみを目的に作られており、既存の紙の強化にはほとんど利用できないことが明らかになった。海外調査の結果から次のような事項が判明した。(1)中性化処理としてはBook Keeper法およびBattel Europe法が実用化段階を含めてかなり有効である。(2)耐折度強化法としてはドイツのZFBが開発したPaper Split法が優れているが大量処理が困難である、冊子には適用できないなどの欠点があり、冊子での強化法は未解決である。(3)期待していた臨界状態の二酸化炭素を利用した方法はフランスでの開発が大幅に遅れており、見通しがむずかしい。海外調査の結果は、対策として直接利用できるものを見いだせなかったが、使用材料等について開発研究に有効な多くのヒントを得た。 海外調査で得たヒントをもとに、研究班では各種のセルロース誘導体を組合わせて塗布、含浸等の手法で耐折度補強法の検討を進めることとし、2001年初頭から配合比、施工法等の基礎実験に入った。また国内で実施されている中性化法について評価を進めているが結論を得るにはあと半年程度が必要である。 なお、古い冊子資料には過去に粘着テープ等で応急修理したものが多く、その残痕が中性化、耐折度補強等の処置の障害になることが予想されるので、既往処置に使用した物質(おもに高分子物質)の同定とその除去方法についても並行して研究を進めている。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 森田恒之,園田直子,岡山隆之 ほか2: "紙の劣化度を測る-官能試験と機器計測の相違"文化財保存修復学会第22回大会講演要旨集. 131-132 (2000)
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[Publications] 林丹紅,岡山隆之: "加速劣化処理によるリサイクルパルプ繊維シートの物性の変化"第55回繊維学会予稿集. 1. 316 (2000)
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[Publications] 池田素子,勝亦京子,稲葉政満,岡山隆之 ほか3: "挿入法による紙の劣化試験"マテリアルライフ学会第5回冬季研究発表会. (口頭発表). (2001)
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[Publications] 深井寛太,岡山隆之: "英国議会資料の劣化度と繊維組成"文化財保存修復学会第23回大会. (口頭発表)(受諾済). (2001)
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[Publications] 園田直子: "紙資料の補修に用いられた粘着テープについて"文化財保存修復学会第23回大会. (ポスター発表)(受諾済). (2001)