Research Abstract |
本研究の目的は,多結晶金属などの微視的不均質性を有する材料について,各結晶粒の結晶学的性質と微視的変形の不均一性との関係を調べ,種々の負荷履歴に伴う不均一変形の発生・成長メカニズムを解明することある.このためまず,単軸変形や多軸変形および純せん断変形などの種々の変形過程に伴う多結晶金属の微視的な不均質性の推移を,微小表面材料特性評価システムを用いて詳細に調べる。また,多結晶金属中の各結晶粒における結晶学的性質を測定し,結晶粒単位の変形挙動との関係について検討することにより,多結晶金属の微視的不均一変形に対する結晶学的性質の影響を評価する.多結晶金属全体に一定の変形が加えられた際に結晶粒毎に生じる変形のバラツキについては,隣接結晶粒の拘束条件などに起因する複雑さから未だ解明されていない点が多い。 そこで本研究では,まず多結晶金属における塑性変形に伴う微小な不均一変形挙動,およびそれと各結晶粒の結晶学的性質との関係を実験的に明らかにするため,純鉄,純アルミニュウム,純チタン,純銅を用い,試験片を作製するとともに測定領域を定めた。その後,これらの試験片に対して引張試験機,ねじり試験機を用いて,単軸引張およびねじり負荷を加え,塑性変形の進行に伴う微小変形形態の発生・成長の様子を調べるため,微小表面材料特性評価システムにより超微小硬度を測定し,評価のための最適な条件を明らかにした。さらに,レーザ顕微鏡,触針式あらさ測定器結晶方位解析機能付き走査電子顕微鏡,プローブ顕微鏡などで,各結晶粒の変形挙動および結晶粒内部での微小な変形について定量的な検討を加えた。 同時に,多結晶金属などの微視的不均一のシミュレーション解析を行うため,3次元の弾塑性および剛塑性有限要素法モデルを開発した。数値シミュレーションとともに,モデル解析も併用して,不均質性と境界における変形拘束などが変形挙動に及ぼす影響について考察し,部分的に明らかにした。
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