複数の火山を有する火山体からの水・土流出に関する火山水文学的研究

2002 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 11460074
• Research Institution: Kagoshima University
• Principal Investigator: 下川 悦郎 鹿児島大学, 農学部, 教授 (60041670)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 谷口 義信 宮崎大学, 農学部, 教授 (70041051) ; 井倉 洋二 鹿児島大学, 農学部, 助教授 (60203270) ; 地頭薗 隆 鹿児島大学, 農学部, 助教授 (50145455) ; 寺本 行芳 鹿児島大学, 農学部, 助手 (10301392)
• Keywords: 火山 / 水文地形学 / 侵食 / 崩壊 / 土石流 / 水文観測 / 河川流量 / 水文観測

Research Abstract

火山体からの水と土砂の流出は,火山の生成年代に基づく地形的・地質的特性の影響を受けて流域ごとに異なる。本研究の目的は,南九州の新旧の火山を対象に水文試験地を設け,さまざまな水文量を観測し,また侵食,崩壊などによる土砂移動を調査し,火山の新旧が流域からの水と土砂の流出に及ぼす影響を評価することである。さらに将来起きるかもしれない噴火とそれに伴う水文環境と土砂移動の変化に対処するための基礎資料を得ることである。これまで実施した調査内容および得られた成果は以下のように要約される。
1.桜島・霧島(活火山),出水市矢筈岳(旧火山)などの火山の地形・地質構造を把握するために地形計測を実施した。地形図や数値地図50mメッシュ(標高)データを用いて傾斜や起伏量を計測するプログラムを開発した。開発したプログラムによって火山体の傾斜区分図,起伏量図,標高分布図,水系図等を作成した。これらの結果を用いて新旧の火山の地形・地質構造を比較した。
2.各火山に試験流域を設定し,雨量,河川流量,河川水質,地下水位,地下水水質などのさまざまな水文観測を実施した。同一山体に位置する流域でも地形開析の度合,緩傾斜面の分布等によって流出特性に違いがあることが明らかになった。すなわち,地形開析が進んで緩斜面が少ない流域は河川の減水が著しいが,広い緩斜面が分布する流域は減水が小さい。また減水の小さい流域は電気伝導度が高かった。
3.空中写真を用いて各火山体の侵食谷や崩壊地の分布図を作成した。また,現地で河床変動および流出土砂量について調査した。また,撮影年の異なる空中写真を判読して,侵食や崩壊の履歴を調査した。
4.桜島の荒廃斜面に対して行なわれた緑化が表面侵食による水主流出過程に及ぼす影響について検討した結果,植生は表面侵食による流出土砂を80〜90%抑制すること,流出土砂の平均粒径は裸地の半分程度であること,植生の被覆によって土壌の浸透能および斜面の粗度係数は大きくなることが明らかになった。

Research Products

• [Publications] 地頭薗 隆: "桜島の北岳山体と南岳山体の土石流河川の流出比較"水利科学. 42・6. 70-83 (1999)
• [Publications] 地頭薗 隆: "南九州における最近の土砂災害,西部地区(九州・・沖縄・山口)における自然災害"自然災害科学. 17・4. 309-313 (1999)
• [Publications] Etsuro SHIMOKAWA: "A Study of the Change from a Landslide to Debris Flow at Harihara, Izumi City, Southern Kyushu"Journal of Natural Disaster Science. 20・2. 75-81 (1999)
• [Publications] 寺本 行芳: "雲仙普賢岳水無川流域における土石流の発生条件および規模の経年変化"平成11年度砂防学会研究発表会概要集. 266-267 (1999)
• [Publications] 地頭薗 隆: "深層崩壊発生場の予測法に関する検討-出水市矢筈岳山体の低水時の流出特性-"平成11年度砂防学会研究発表会概要集. 308-309 (1999)
• [Publications] 下川 悦郎: "出水・針原川流域で発生した深層崩壊とその発生場の予測"自然災害総合研究班災害科学研究通信. 59. 2-10 (1999)
• [Publications] 地頭薗 隆: "1938年10月鹿児島県大隅半島南部で発生した土砂災害"鹿児島大学農学部演習林研究報告. 27. 1-9 (1999)
• [Publications] 地頭薗 隆: "南九州の火山地域における崩壊の水文地形学的検討"地すべり. 36・4. 14-21 (2000)
• [Publications] 地頭薗 隆: "深層崩壊発生場の予測法に関する検討-出水市針原川流域における水文観測-"平成12年度砂防学会研究発表会概要集. 8-9 (2000)
• [Publications] 松本 舞恵: "植生を指標とした表層崩壊発生場の予測"平成12年度砂防学会研究発表会概要集. 344-345 (2000)
• [Publications] 地頭薗 隆: "鹿児島県の自然と土砂災害"桜島キャンプ砂防in桜島2000講演集. 1-14 (2000)
• [Publications] 地頭薗 隆: "シラス斜面崖錐の崩壊に関する水文地形学的検討"平成13年度砂防学会研究発表会概要集. 388-389 (2001)
• [Publications] 地頭薗 隆: "深層崩壊発生場の予測の試み-鹿児島県出水市矢筈岳山体を例にして-"水利科学. 45・2. 1-16 (2001)
• [Publications] 寺本行芳: "雲仙普賢岳における土石流発生降雨条件と流出特性の経年変化"砂防学会誌(新砂防). 54(5). 50-54 (2002)
• [Publications] 寺本行芳: "雲仙普賢岳赤松谷川流域における地形変化と生産・流出土砂量の経年変化"平成14年度砂防学会研究発表会概要集. 354-355 (2002)
• [Publications] 地頭薗隆: "南九州火山地域における地下水型崩壊の予測"土砂災害に関するシンポジウム講演論文集. 9-12 (2002)
• [Publications] 寺本行芳: "雲仙普賢岳における水文・侵食環境の変遷と土砂流出"土砂災害に関するシンポジウム講演論文集. 46-49 (2002)
• [Publications] MATSUMOTO M.: "Revegetation Process and Topsoil Development on Shallow Landslide Scars, and Prediction of Potential Shallow Landslide Sites"International Congress Interpraevent 2002 in the Pacific Rim-Matsumoto/Japan Congress publication. volume2. 883-892 (2002)
• [Publications] 地頭薗隆: "シラス地域の水文地形とシラス斜面崖錐部の崩壊"地形. 23(4). 611-626 (2002)
• [Publications] 下川 悦郎: "97出水土石流災害 九州・沖縄の地盤工学-あゆみと展望"社団法人地盤工学会九州支部. 333 (1999)