Research Abstract |
富山県神通川流域カドミウム汚染地域において,昭和21年から30年の間に生まれた,調査時45歳から55歳の男性住民全員を対象に,カドミウムの異常暴露の有無ならびに健康への影響について検討し,以下の新たな知見を得た。 対象者126名中88名から尿を回収した(回収率70%)。糖尿病3人,腎臓病2人,高血圧症5人の合計10名を除外し78名について解析した。尿中カドミウム値の地区別平均値は,対照A地区(11人)の1.8μg/g Crに対し,汚染地域B(22人),C(21人),D(24人)の3地区では2.1, 3.3, 3.7μg/g CrとC, D地区では有意に高値を示した。調査時,対象者が摂取していた精白米中カドミウム濃度を測定した。自家生産米摂取率は,A地区67%,B地区36%,C地区33%,D地区76%であった。自家生産米中カドミウム濃度の平均値は,A地区0.11ppm, B地区0.08ppm, C地区0.17ppm, D地区0.05ppmであった。汚染土壌復元事業の結果,汚染地区の生産米中カドミウム濃度は,対照地区と差はみられなかった。購入米中カドミウム濃度の平均値は,A地区より順に0.11, 0.12, 0.10, 0.09ppmと地区間に差はみられなかった。したがって,汚染地区住民にみられた尿カドミウム値の高値は,調査時点の曝露量ではなく,体内とくに腎臓に蓄積したカドミウムレベルを反映していると考えられた。したがって,昨年度報告した女性と同様に,戦後生まれの男性住民においても,カドミウムの異常曝露・体内蓄積が明らかとなった。尿細管機能障害の指標である尿α1-ミクログロブリン値は汚染地区住民が対照より高い傾向にあったが,統計的には有意ではなかった。
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