2001 Fiscal Year Annual Research Report
食品流通における環境保全型物流システムの導入と展開に関する研究
Project/Area Number |
11556040
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
尾碕 亨 酪農学園大学, 酪農学部, 助教授 (70275486)
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Keywords | 通いコンテナ / バラ流通 / バラ販売 / 規格の簡素化 / 包装の簡素化 |
Research Abstract |
21世紀を迎えるにあたり、自然や環境破壊などによる地球温暖化、ゴミ問題など人類存続の基盤である地球環境が損なわれるおそれがあることが世界共通の認識となっている。こうした中で、これまでの経済合理主義に重きをおいた大量生産、大量流通、大量消費、大量廃棄の社会経済活動の見直しが必要となっている。すなわち21世紀は、これまでの「一方通過型社会」から地球環境への負荷の少ない持続的発展可能な「循環型社会」へ変えていくことが重要であり、そのための取り組みがわが国においても徐々にではあるが進められつつある。そうしたなか、今日、野菜流通においても、段ボール(以下、DBと略)やトレー等容器包装減量化などがリサイクルなど環境問題の観点から強く求められているが、加えて流通の見直しによる低コスト化の観点からも極めて重要である。また、現在消費構造も単独世帯や少数世帯の増加、高齢化の進展などに伴う購買単位の小口化が進展しつつあり、こうした消費構造の変化に対応した野菜流通への転換も求められている。 本年度は、まず第1に、現在の消費構造の変化に対応した野菜の販売形態について消費者がどのように考えているのかを検討した。野菜販売形態に関する消費者アンケートにより、わが国の消費者も、野菜の販売形態として、ばら販売を望んでいる消費者が多数存在することが明らかとなった。このような消費者意識に対応するためにも、バラ販売による販売を拡大していく必要がある。そのためには、小売業で大きなシェアをしめる量販店の販売形態を、現在の小装中心の販売形態からバラ販売形態に転換していく必要がある。しかし、現在の小装販売形態をバラ販売形態にするためには、産地から小売(販売)までの物流そのものの見直しが必要である。現在の小装中心の販売形態からバラ(定価や計量)販売が増大すれば、現在の物流も規格や小装の簡素化が可能となり物流コストの削減も可能となる。 第2に、DBから通いコンテナ転換、または規格や小装の簡素化による流通(物流)コスト削減の可能性について、物流タイプを4つにわけ、長ネギを事例として検討した。考察の結果、現在、長ネギの中心的な物流形態である物流タイプ1(DB+14規格区分+小袋販売)の収穫から販売までの物流作業時間(コスト)を100とした場合、バラ定価販売に対応した物流タイプ2(DBから通いコンテナ+14規格から3規格+小袋からバラ(定価)販売)は、物流タイプ1の63.96の作業時間(コスト)での物流が可能となる。同じくバラ定価販売に対応した物流タイプ3(DBから通いコンテナ+14規格から3規格+根付き+皮付き+小袋からバラ(定価)販売)では、さらに物流タイプ1の39.37での物流が可能となる。さらに、仮説ではあるが、バラ計量販売を想定した物流タイプ4では、物流タイプ1の26.43での物流が可能となることが明らかとなった。 以上の2課題の考察の結果、今後、野菜流通においても、環境問題や低コスト化、さらには消費構造の変化の観点から、現在のDBによる出荷から「通いコンテナ」に転換しつつ、バラ流通バラ販売に転換していくことが求められつつある。「通いコンテナ」と規格や包装の簡素化によるばら流通・販売とが、結合したとき、わが国の野菜流通も環境問題やゴミ問題にも対応した低コストの野菜流通の実現が可能となる。そのためにも、野菜流通に関わるすべての主体の連携と協調が必要であり、そうした共生の論理が今求められている。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 尾碕 亨: "野菜流通への環境保全型物流の導入と展開に関する研究"日本流通学会年報「流通」. No14. 86-101 (2001)
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[Publications] 尾碕 亨: "青果物の環境保全型物流に関する研究"酪農学園大学紀要. 第25号第2号. 275-304 (2001)
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[Publications] 尾碕 亨: "今こそ見直し迫られる農産物流通コストの削減"北方農業. 第51巻10号. 4-9 (2001)